えほん育児日記

わたしの子育て   

~絵本フォーラム第103号(2015年11.10)より~  第3回

わが家の子育て3-1

 娘が小さい頃、大好きだったテレビアニメがあります。その変身アイテムを、画用紙で作ったことがありました。おもちゃ売り場で、いつも欲しそうに眺めていましたが、誕生日もまだ先で、買ってやる理由もありません。そのうちに飽きてしまうものだし、これでいいかという気持ちでした。娘も喜んで遊んでいたのですが、本物のおもちゃを持っている友達の中で、そんな紙のペラペラで遊んでいる娘を見ていると、いじらしく、切ない気持ちになった経験があります。少し経てば、新しいアニメやキャラクターが流行することは容易に想像がつきます。それがメディアの戦略だと知りつつも、周囲から「そんな大した値段でもないのに、買ってやらないんだ」という風に思われるかなと、後ろめたくも感じました。

 あれから数年たつのに、いまだに、子育てでも買い物でも、「これでいい」と思っても、自信が持てず、ぶれてしまう自分がいます。娘には、「お菓子は家にあります」とラムネ1つ買ってやらないのに、自分の物はよく考えずに買ってしまい反省することもしばしばです。

 娘は、少しずつお金にも興味を持つようになりました。これから、お金との付き合い方、欲しい物ができた時に、どう折り合いをつけていくのか学び始める娘にとって、私がお手本にならないと……。襟を正そうと思うのですが、なかなかうまくいかないのが現実です。でも、子どものうちから、そんな終わりの見えない戦略に娘を惑わせたくない。落ち込む私の中で、やはり、その気持ちがむくむくと大きくなってきます。

 とりとめもなく、娘のためにと思い悩んでいたことでしたが、そのうちに、私自身の「どうお金と付きわが家の子育て3-2合うのか」「どんなふうに暮らしたいのか」という思いと対峙することとなりました。そうするとやはり、ひと手間かけて作ったり、修理したりする事を大切にしていきたいと思えてきます。節約して、必要なことへお金を回したいという気持ちもありますが、小さい頃から、手を動かして何かを作ることが大好きでした。工作や手芸で、自分の思い描くものがうまく作れた時の嬉しさは格別です。そして、娘にも、得手・不得手はあっても、その喜びを知っている子になってほしい、冒頭の変身アイテムを作った時、そんな気持ちが根底にあったことに、今更ながらに気が付きました。

 あれから、私と娘は、空き箱などで何か作ったり、手芸にも挑戦したりしています。うまく作れないと、イライラする娘に、私も忍耐のしどころですが、最近では、驚くようなアイデアと根気で、遊びに必要な物を作っています。 買わないことが素晴らしいというわけではなく、それぞれのご家庭の価値観に照らして、大事に思えることや物へお金を支払う、そうやって、家族がこころ豊かに過ごせたらいいなと願います。 

 そんな時、『クリスマスにはおくりもの』(五味太郎/作、絵本館)が思い浮かびました。相手を思いやる気持ちにあふれた、これからの季節にピッタリの絵本です。サンタさんも、女の子も、きっと互いの喜ぶ顔を思い浮かべてプレゼントを用意したのだと思います。娘にとっても、買ってもらったり、贈られたりすることが当たり前ではなくて、嬉しい出来事であってほしい、そう思えてきました。

  これまで、娘の衣類はほとんど私が購入していましたが、思い切って娘を連れて買い物に出かけました。通学用であるから、ポケットのあるもの、脱ぎ着のしやすいものなど条件を付けて、1着を選んでみるように言ってみました。娘は、真剣な表情で、あれこれ見比べ、ようやく気に入った1着を選びました。私は、横の婦人服売り場が気になりつつも、「今日は買わない」とぐっとこらえ、帰宅しました。夜、夫に「ありがとう」を言って、袖を通した時の娘の嬉しそうな顔といったらありません。

 こんな風に、娘と、夫と、日々考えながら、毎日は過ぎていきます。(くりもと・ゆうか)

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