絵本のちから 過本の可能性

「絵本フォーラム」107号

2016.07.10

『絵本講師・養成講座』を受講して


伝えたい思いが生まれました


今泉 恵子(芦屋12期)

今泉恵子 以前に住んでいた地域の図書館が募集していた図書館ボランティアに応募して、読み聞かせボランティアの活動を始めてから15年になります。ボランティアを始めてしばらく経った時、「絵本講師・養成講座 が開講されるということを知りました。絵本に関する知識もあまりないまま始めてしまったボランティアでしたので、受講してしっかりとした知識を身につけたいなと思いましたが、当時は諸事情で断念してしまいました。

  図書館でお話し会をしていると、子どもに付き添って来られたお母さん方は、私のことを「この人はお話し会をするくらいなんだからきっと絵本について詳しいに違いない」、と思ってくださるのでしょう。終了後、「どんな絵本を読んでやったらいいんでしょうか?」と質問されることが度々ありました。「絵本講師・養成講座」は受講できなかったものの、絵本に関する本を読んだり、単発の講演会を受講したりしていました。私なりにボランティア開始時点よりは絵本を選ぶ目を養なっているつもりではいたのですが、では、それを自信をもって尋ねてくださったお母さんにお伝えできるかというと、できないのです。自信がありませんでした。考えていることを人に伝えられるだけの言葉も持っていませんでした。「お母さんが好いなあと思う絵本を読んであげてくださいね」と答えて、逃げていました。これではあまりに情けない、このままではだめだ。きっちり勉強して、自分の中に核になるようなものを持ちたいという思いがどんどん大きくなりました。そして、周りの状況も許されるものになった昨年、「絵本講師・養成講座 の受講を決めました。

  4月から始まった講座は、すべての講義が、講師の先生の熱いお気持ちがいっぱい詰まったものでした。いずれの講義でも、繰り返しお話しくださったのは、言葉の大切さ、考えることの大切さです。人を人たらんとするのは言葉を持っているからで言葉を持っているから考えることができる、ということです。そして、絵本は絵と文字で描かれた言葉の宝庫なのだということです。だから、家庭から言葉が失われつつある今、子育てに絵本が必要なのだということを教えていただきました。また、毎回のレポートを書くたびに、私自身が自分の言葉の貧困さを突き付けられることになり、より多くの言葉を獲得し考え方の引き出しを増やすために、学んで考えなくては、と強く思いました。

  養成講座を語るうえで、もう一つ忘れてはならないのが、グループワークです。最初からしっかりと子どもをとりまく環境に問題意識をもって受講されている方、子育ての真っ最中の方など、年齢も職業も住んでいる地域も受講動機も様々ですが、絵本で子育てという共通の志のもと、毎回、とても活発で有意義な話し合いの時間が持てました。たくさんの刺激をいただきました。また、苦しいレポートの締め切り間際には、メールで励ましあって、頑張ることができました。

 「絵本講師・養成講座 を修了した今、思うことは、もっともっと学び考えよう、学び続け、考え続けようということです。そして、尋ねられたらお話しするというような、待っているだけの姿勢ではいけないということです。もっとこちらから積極的に絵本が子育てになくてはならないものだということをお伝えしていかなくてはいけない、という思いが生まれました。

 私の絵本講座の最初の受講生は、昨年社会人1年生となり小学校教師として勤め始めた息子でした。申し訳ないことに、私の知識不足のため、彼の幼児期に豊かな絵本体験をさせてやれたとは言い難く、絵本の大切さを知れば知るほど、後悔ばかりがつのりました。最近そのことを息子に謝ると、「絵本は毎晩読んでくれたでしょ。読んでもらえるのが嬉しかったし、楽しかったから、まあ、いいんとちゃう」と優しいことを言ってくれました。そして、過去の失敗を補うべく、たまに帰省してくる息子を捕まえては、養成講座で学んだばかりのほやほやの知識で絵本講座の押し売り講義です。右から左へ聞き流しているのかなと伝わり具合には半信半疑だったのですが、彼は学級懇談会で保護者の方に家庭での絵本の読み聞かせをお願いしたり、自分でも週に一度は時間を設けてクラスの子どもたちに絵本の読み聞かせをするなど、彼なりに母の思いに応えてくれているようで嬉しく感じています。

  最後に、「絵本で子育て」センターの先生方、先輩方、大好きな一班の皆さん、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。それから私事ですが、レポート締め切り間際の家事の手抜きを黙認し、清書前には毎回、誤字脱字チェックをしてくれた夫へ「ありがとう」。
(いまいずみ・けいこ)


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