私の絵本体験記

「絵本フォーラム」117号(2018年03.10)より

「日常とは違う世界」

早矢仕 美加 (大阪府高槻市)

早矢仕 美加 絵本体験記 恥ずかしながら、赤ちゃんに絵本を読むことなど、若い頃は思ってもいませんした。息子が生まれて半年位経った頃でしょうか。お砂場友だちのお母さんが、我が子と同い年の赤ちゃんと、そのお兄ちゃんに絵本を読み聞かせをしていると聞きました。「えっ、赤ちゃんが絵本なんて見る?」と半信半疑ではありましたが、「松谷みよ子あかちゃんの本」より『いない いない ばあ』(童心社)、同じく『おふろでちゃぷちゃぷ』(童心社)を読み聞かせてみました。すると、息子が私の読むのを聞きながら、じっと絵を見ているのです。大発見でした。それから、夜眠る前の絵本の読み聞かせは、我が家の大切な習慣になりました。たまに、夫が読み聞かせしてくれることもありましたが、彼は全くの棒読み、それでも、子どもが一心に聴いていた姿を思い出します。

  下の子の出産の前後、2歳になる前の息子を夫の両親に預かってもらいました。その時も絵本を数冊持たせました。夫の両親とは、しょっちゅう顔を合わせていましたが、何日も一人で泊まりとなると、きっと淋しがるに違いありません。せめて慣れ親しんだ絵本を読んでもらって、心を落ち着かせてほしいとの願いを託したのでした。

  妹が生まれ、息子が嫉妬する時期もありましたが、寝る前の絵本タイムは心穏やかな時間で、叱ったり泣かれたり散々な日でも、私を真ん中に川の字になって絵本を読んで聞かせている間は、何もかも忘れて、お話の世界に夢中になっていました。

 絵本がいつも、私たちを日常とは違う世界へ連れて行ってくれました。

(はやし・みか)


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