リレー

絵本講師としてのスタート
(栃木県・くもんのざわまち教室・山口ちい)


 今年の5月、私は絵本講師としては初めて「絵本で子育て」の勉強会に伺いました。「母の日」を意識して、これまでの絵本体験(小学校の朝の読書タイム参加や養護施設での絵本でふれあいタイム等々)をもとに、ぜひにと思う絵本選びをしてみました。絵本フォーラムの真髄である、今こそ“母性を”“真剣に子育てを”という願いを込めて、1冊1冊手に取っていくうちに、みずからの子育ての回想(反省)と、6年間にわたる施設の子どもたちとのやりとりが走馬燈のように浮かび上がってきました。

 かつて、ガブリエル・バンサンの『アンジュール』を紹介したとき、文字のない白黒の絵本の1ページごとに、道ばたに投げ捨てられた犬の気持ちを口々に叫んでいた高学年の子どもたち。『もしもし おかあさん』を読み語ったとき、いもとようこさんの優しい絵にほっとしてか、「かわいい」を連発し、「お母さんねこ、よかったね」とつぶやいてくれた幼い子どもたち。

 私は今回のお母さん方への読み語りにおいて、迷わずこの2冊と、シルヴァスタインの『おおきな木』を選びました(絵本に対する認識を新たにさせてくれたこの絵本は、母親にとって必読だと思っています)。そして、共感してくださったお母さん方から、力強い感想をたくさん寄せていただけました。

 「私はこれからも母親というものを考えるとき、あの母ねこの影のページを思い浮かべる日があると思います」
 「大きな木が最後に切り株になって……。それだけでウルウルしてきました」
 私のほうが心を揺さぶられる感想文の数々……。その一つ一つを胸に刻み、これからも子育て進行形のママたちへ、絵本を通して心からのエールを送り続けていきたいと思います。
絵本フォーラム47号(2006年07.10)より

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