リレー

お話を耳で聞いて、絵を読んで
(埼玉・いいおもちゃどっとこむ・店長 中谷 資子)


 仕事上、特に乳児を持つお母さん方にお会いすることが多い私ですが、「絵本はもっと大きくなってから」と考えている方が非常に多いことに驚きます。「絵本は絵の本。字を読めないうちは、大人が読み聞かせをしてくださいね」とお話しして、ちょっと試しに……と、1、2冊、短いお話を読んでみると、さっきまで動き回っていた子、泣いていた子どもも、お話が進むにつれ、絵本を見つめ静かになっていきます。心地よい静けさの中、お話が展開し、最後にパタンと絵本を閉じると、「はあ〜」という声。子育て真っ最中、特に目の離せない乳児を持つ忙しいお母さんは、意識して絵本と向き合わなければ、ついつい日々の忙しさに流されてしまうのかもしれません。改めて絵本の楽しさに気づいてくれた様子を見ると、私もほっとします。

 読み聞かせの仕方を伝えた後、大人の方には、どうしてこういう読み方をし、このスピードだったのかということ、また、絵に対して少し解説を加えます。『しろくまちゃんのほっとけーき』の場合、「さて、こぐまちゃんは何回お着がえをしましたか」と質問を投げかけます。「えっ、見てなかった!」の声。絵本は絵の本。お話はもちろんですが、絵を楽しみたいものです。絵を描いてくださった方のちょっとした遊び心が見え隠れして、新たな発見もあると思います。

 絵だけを見る方法……。それはだれかに読み聞かせをしてもらうこと。例えば、今隣にいる人に、試しに1冊、読んでもらってみては? 読み聞かせてもらう心地よさ、絵の中から生まれる想像の世界の奥深さを感じ取ることができるはずです。

 お着がえの回数の答え? それは皆さんで確かめてみてください。

(いいおもちゃどっとこむ http://e-omocya.com
絵本フォーラム47号(2006年07.10)より

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