リレー

お母さんも魅入られた「あめだまみどり」
(兵庫県・明石市立錦が丘幼稚園園長・塩谷千明)



  これは、ローレン・チャイルド作の絵本『ぜったいたべないからね』に登場する“宇宙語”の一つなのですが、現代科学の力を駆使しても解明できそうにない不思議な力を、園児の1人に発揮してくれました。まるでテレパシーのように。
  5歳のAちゃんは、豆類が苦手です。弁当の中に入っていると、いつもきれいに食べ残していました。ところがある日、幼稚園への登園途上で、お母さんとこんな会話を交わしました。

お母さん「今日は、お弁当の中に緑のキャンディが入っているからね」
Aちゃん「えっ、緑のキャンディってなに?」
お母さん「お弁当を開けてからのお楽しみ」

  実は前日、Aちゃんのお母さんは、絵本講師・田中八潮先生の絵本講座に参加されていたのです。4歳児が対象だったので、Aちゃんはその場に居合わせなかったのですが、お母さんは「あめだまみどり」の言葉に魅入られたそうです。Aちゃんの心により響きやすいよう、「緑のキャンディ」にアレンジし、見事、作戦は大成功。

  帰宅してからそっと弁当箱をのぞいてみると、スナックエンドウは一粒も姿が見えず、きれいに食べ尽くされていました。そばに来たAちゃんが一言。「緑のキャンディやったから、みんな食べたで」

絵本フォーラム47号(2006年09.10)より

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