こども歳時記
〜絵本フォーラム第50号(2007年01.10)より〜
子どもに何を、期待しますか? 

 明けましておめでとうございます。新しい年を迎え、皆様もそれぞれに今年の目標や抱負を立てられたことでしょう。

私は、今年母として 4年目を迎えます。母親にさせてくれたわが子に感謝し、この子の成長とともに自分も成長できている喜び、子育てのおもしろさを実感しています。その一方で、育児に自信がもてず、子育てへの不安や悩みが尽きません。

日々新聞やテレビが伝える社会の様子は重苦しく、子どもたちは先行きの不透明な世の中に生きていかなければならないのです。わが子が社会に取り残されないかを不安に思い、子どもの将来を良いものにすることが親の責任だと強く感じるあまり、「こうなって欲しい」という期待をかけすぎて、子ども自身が望むものが見えなくなってはいませんか?

『オリバーくん』(ロバート・クラウス /作、J・アルエゴ、A・デュウェイ/絵、はせがわしろう/訳、ほるぷ出版)の、ふくろうの子オリバーくんは演技をするのが大好き。その才能を伸ばしてやろうと、将来俳優にさせたいママと、社会的地位の高い医者か弁護士にさせたいパパは、それぞれに物を買い与えたり、勉強させたり。オリバーくんも、両親の期待にこたえて立派にやってのけるのですが、さて、大人になって彼は何になったと思いますか?答えは本を読んでいただくとして、親の願いとは全く違う職業に就く結末には、本当に好きなものをみつけたオリバーくんに感心すると同時に、親としては身につまされ考えさせられる内容です。


『オリバーくん』
(ほるぷ出版)
こころ豊かな社会が広がりますように

『預言者』
(至光社)
  世界 30数ヶ国語に訳され、愛読されている『預言者』(カリール・ジブラン/著 佐久間彪/訳)には、「子供について」書かれた、このような詩があります。

あなたの子は、あなたの子ではありません。
自らを保つことそれが生命の願望、そこから生まれた息子や娘それがあなたの子なのです。
あなたを通ってやってきますが、あなたからではなく。
あなたと一緒にいますが、それでいてあなたのものではないのです。
子に愛を注ぐがよい、でも考えは別です。
子には子の考えがあるのです。・・・・・

子どもは親の所有物ではないし、コントロールできるものではないのです。思い通りにならないとイライラして叱ることも、親の期待を押し付けることも、結局は自分の枠の中に子どもを入れて安心しているだけかもしれません。子どもの幸せは子どもが自分自身で築いていくもの。親の役目は、子どもが自分の人生を生きる力をつけるための土台作りと、羽ばたく時期がきたら精一杯応援してあげることなのでしょう。目の前にいるわが子を受け止めて、とことんつきあうことの中で、子育ての不安は、楽しみや喜びに変わるはずです。

今年も、より多くの親子が絵本の読み聞かせを楽しみ、深い親子の絆が結ばれますように。そして「こころ豊かな社会」が広がりますように。
(きた・もとこ)


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