リレー

「絵本の中に残る思い出」
(福岡・読み聞かせボランティア・作本由紀恵)


 
 小学校での朝の読み聞かせボランティアを実施しています。飛び跳ねている1年生から、私たちと同等の背丈の6年生まで、かなり幅のあるまとまりです。聞く態勢も、わあわあ言いながら寄り添って集まる学年や、最初のころは何となく遠巻きに仲よしグループで固まる学年など、さまざまです。子どもたちは気持ちや変化を体でも表現し、素直でかわいいです。同じ絵本でも反応はさまざまで、『わにがわになる』(多田ヒロシ/作、こぐま社)では、「先生のだじゃれよりおもしろい」の一言で大笑いしたり、照れ笑いしたり。絵本は、年齢に関係なく楽しめるものであることがわかります。

  ほんの10分間の絵本の共有体験で、子どもたちは感動や新しい気づきを受け取り、読み手は子どもの成長段階が理解できます。学校の読み聞かせだけでは、もったいない限りです。日々の子育てのコミュニケーション手段に最適のものだと常に痛感しています。

  我が家には、中学生を頭に4人の子どもと『ほるぷこども図書館』があります。4人それぞれに好む本はさまざまで、裏表紙にある対象年齢もあまり参考にならないようです。1冊の本を手に取ることで、そのころの子どもの成長過程をしっかり思い出せます。興味を持っていたもの、口癖、一緒に話していたこと、遊んだこと……。絵本が家の中の、いつでも手に取れる場所にあることは、思い出のアルバムをいつも開いた状態にしているのと同じ。そこに、さらに日々の生活が積み重なっていきます。そんな環境にあることは、親にとっても子にとっても、ともに育ってきたあかしとなり、心強く、温かく、心の支えにもなります。いつまでも会話のできる親子関係が築けるきっかけとなることでしょう。

絵本フォーラム51号(2007年03.10)より

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