私の絵本体験記
「絵本フォーラム」55号(2007年11.10)より
「 お兄ちゃんが読んであげるね 」
西村 愛子 さん( 兵庫県西宮市 )

 4歳の息子と1歳の娘は、パジャマに着替えると、それぞれに読みたい本を持ってきます。「お兄ちゃんが先やで!」。息子に言われ、泣きながら「先に読んで」とせがむ娘。何とかなだめて3人で〈絵本タイム〉。時間に追われながら過ごす毎日の中でも、私にとっては、子どもたちに最もゆったりと接してやれる幸せなひとときなのです。

 私が、ほるぷフォーラムの絵本講座に参加したのは、ある出来事がきっかけでした。息子が、絵本に興味を持ち始めた1歳半のころ、夫が息子のテレビを見ている姿と、読み聞かせをしている姿とを、ビデオカメラに収めたのです。その様子を続けて映像で見た時、ハッとしました。

 テレビを見ている時の息子は、じっと画面を見つめてはいるのですが、無表情で、まるで〈人形〉のよう。一方で、読み聞かせをしてもらっている時は、表情もイキイキしていて、目もよく動いていました。そして何より、私に寄り添い、微笑み合い、同じ時間を共有することが、親子の絆を深めていくのだと、その表情から実感できたのでした。

 「絵本て、すばらしいな」。そんなことを改めて思っていたころ、たまたま、絵本講座のことを知りました。絵本の読み聞かせというコミュニケーションを通して親子の絆を深め、子どもの感受性も豊かになる??。私の思いは確信に変わりました。

 今では、息子が「お兄ちゃんが読んであげるね」と、娘の好きな絵本を選んで読み聞かせをすることもあります。絵本の楽しさを日々、感じながら、この喜びをこれからも続けていきたいと思っています。

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