私の大事な木の図鑑の本がバラけて壊れてしまった時、丈夫で美しい本に創り直してくれたルリユールおじさん。“ルリユール”という言葉は、製本、装丁、修復のすべてを手仕事で仕上げる製本職人という意味なのね。
父、子、孫と受け継がれてきた老職人のおじさんと私の出会い。そして、一冊の本を創る過程の物語を、いせ ひでこ (伊勢英子) さんという日本の芸術家の方が絵本に描いたの。心に沁みる清冽な絵本です。 『ルリユールおじさん』 (いせ ひでこ / 作、理論社)。
いせさんは、何百年もの伝統、歴史、仕事への誇りをもって、毎日繰り返される地味で平凡な作業の中にある豊かさや、本が時代を超えて何度でも生命をよみがえらせることに感動して、パリに住み工房に通い、製本過程をよく観察してこの絵本を描かれたの。
登場人物はおじさんと私。本とアカシヤの木。静かで落ち着いた濃淡の青と茶の木々や街並みの色。少しの赤と明るい緑色の木の葉。一冊の本の中で時間がゆっくりと流れる。
デジタル化が進んだ今の時代、根気と忍耐と愛情をもって手間ひまをかけ一つのものを創り育てるのが困難なのは、世界じゅう共通のことなのね。子育てにも通じますね。
心を込めて創られた本は人と出会って生命を吹き込まれ、愛を伝えてそのひとの人生を豊かにするわ。いじめや人間関係に悩み未来に希望のもてない子どもさんや若い人、子育て中のお父さん、お母さん、年配の方々に読んでほしいな。何度でもやり直せる。
あなたが私とおじさんとお話したら、きっとこの本を抱きしめたくなりますよ。 <今も本を抱きしめているソフィーより>
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