小学校の司書をしていると、先生方に「良い読み聞かせとは何ですか?」と尋ねられることがある。人それぞれに性格・声質・醸し出す雰囲気が違うので…、と前置きして、伝えたいと思う自分の好きな絵本を心を込めて読んであげてください。と答えることにしている。
読み聞かせは、技術ではなく思いの深さであると思う。なぜなら、絵本作家に自作の絵本を読んでもらうと、同じ絵本の今までに聞いたどんなものより、味わい深く何とも素敵だからである。
図書の時間等に読み聞かせを重ねていくと、いろいろな話を抱えて図書室に来る児童が増える。
ある児童と熱心に話していたところ、担任の先生が「あの子が楽しそうにあんなに話す姿を初めて見ました」と驚かれたことがあった。どうやら、読み聞かせをすることによって「ちょっとおもしろい人だぞ。話のわかる大人だ」と思われるらしい。集団の読み聞かせであっても一人一人の心に響き、心が耕されていくのであろう。 一度、自分で何度読んでも心にストンとこない絵本なのに、評判が良いからという理由で選んで大失敗をしたことがあった。子どもたちは、実にシンプルに正しく反応してくれる。正直だが残酷なのだ。
今年は、訳あって小学校図書館の現場から離れているが、本好きな 6年生が最後に手渡してくれた「こんなに本の話がいろいろできる司書の先生は今までいなかったです」という手紙は最高に嬉しかった。