私の絵本体験記
「絵本フォーラム」70号(2010年05.10)より
こころから……
中村 知子さん(神奈川県川崎市)

 とても元気な女の子と、男の子の子育てに奮闘する日々を送っています。その元気な娘が、 3歳でお姉ちゃんになると分かってから元気は度を越し、その上、それまで自分で出来ていた事を全くやらなくなってしまいました。親友が、私が娘と離れる時間を一瞬でも作ってあげないと!と焦るほど凄まじい赤ちゃんがえりです。怒れば怒るほど娘は益々言うことを聞かなくなり、妊娠中で気持ちを上手くコントロールできない私は、更に激しく叱り付けてしまい、夜、寝顔を見て自己嫌悪に陥るという悪循環から抜け出せず苦しい毎日でした。

 お腹も大きくなったある日、娘と図書館へ出掛けました。絵本コーナーを眺めていると、『こころからあいしてる』という背表紙の本が目に留まりました。手にとって見ると、表紙一杯にクマの親子が描かれています。愛が溢れるような優しいタッチの絵です。子グマは、母グマに「こころからあいしているってどういうこと?」と問いかけます。母グマは、目で、鼻で、体中で「あいしてますよ」と何度も語りかけます。いつも怒ってばかりで、娘に愛を上手に伝えられないでいた私は「そうよそうよ、本当は私もこんな風に娘を愛しているわ」と、目頭が熱くなりました。そして、読み聞かせてみると、娘は笑顔で「ママもお目目であいしてくれているの?」等と尋ねてきたので、私が大きくうなずくと、娘の目は三日月になりました。この絵本が、私たち親子の気持ちを結んでくれた瞬間でした。

 あれから数ヶ月、怒りん坊ママが健在で心から…ごめんなさい。でも、ママは前に進むしかないのです。絵本たち、これからも力をお借りします!(なかむら・ともこ)            

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