私の絵本体験記

「絵本フォーラム」76号(2011年05.10)より
「息子との絵本時間」
 水野香織さん (愛知県海部郡)


 三歳の息子との絵本時間は、主に就寝前のベッドタイムです。寝る前に息子が1冊、そして私も1冊、絵本を選びます。なぜ私の絵本か…というと、息子が、おそらく1冊では物足りなくて私の絵本を持ってきたのが始まりです。それからは、2冊の絵本を寝る前に読むというのが、「息子との決め事」になっています。

 毎晩、二人で絵本を楽しむ時間は至福の時で、息子は、絵本を読んでいる間、一秒たりとも見逃すまいとしてお話の絵に集中します。「あれ、ここにこんなネズミさんいたっけ?」「虫さん、何しているんだろうね」大人なら見逃してしまいそうな、ほんの些細な絵や表情も、彼にとっては重要で、その小さな発見一つ一つが愛しくて仕方ありません。

 とはいっても、日中は、「早くしなさい」などと口やかましく過ごしています。「あれは嫌だ」と癇癪を起こして、三歳の息子相手に、本気で怒ることもしばしばです。でも、どんなに怒っても、どんなに(息子が)泣いても、寝る前の絵本時間には、一緒に選んだ絵本を読んで「楽しかったね、明日もたくさん遊ぼうね」と穏やかな気持ちで眠りにつくことができるのです。そういう意味では、絵本って魔法です。これから、幼稚園に入ったら、少し慌しくなるでしょう。そして小学校に入ったら、もっともっと慌しい日々を送ることになるでしょうが、寝る前の絵本時間だけは続けて、お話の世界を楽しんだり、毎日を振り返ったりしながら親子の絆を深めていきたい…と強く思っています。 

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