■訂正です
  前号(1月10日)の本欄4段29行目、《「犯罪者的集団」》の「的」を削除します。むの たけじの『詞集 たいまつ』(評論社1997年版)の文章を思い出した。
 《「的」は表現の敵だ。——けさの新聞の一ページにも、政治的・世界的・制度的・本質的・具体的・抽象的・基本的・相対的……と「的」がザラに出ていた。「世界的動向」を「世界の動向」と、「民主的制度」を「民主の制度」といっては、なぜいけないのか。(中略)「的」は「マト」だ。「のような」「それらしい」なんていうアイマイさをゆるしては、なにものにも的中させることができない。》
——その通りです。正しく表記すると「犯罪者集団」、である。

■相変わらずの欺瞞と迷走 
 政府(野田佳彦首相)と東京電力株式会社(西沢俊夫社長)は、東京電力福島第一原子力発電所の事故(件)対応に、相変わらず欺瞞を積み重ね迷走を続けている。
 政府は原発事故直後の対策会議などの議事録(公文書)は作成していない、と中学校の「学級会」でも驚くようなことを言っているが、これは胡散臭い。正直に発表すれば政府関係者・御用学者のおつむの程度と無責任(国民に対する非情)が暴露される。それを恐れているのであろう。
 負けず劣らず醜悪なのが東京電力である。自らの所有物である原子力発電所から放出した放射性廃棄物を「無主物」と宣う。こんなのは序の口である。電気料金の値上げは「義務であり権利である」……書き連ねるのも恥ずかしい。この会社には、まともにものを考えられる人間はいないのか。
 2月12日の朝日新聞によれば、東京電力の発電能力は6500万kWという。「でんき予報」なるものは、今まで嘘八百を垂れ流してきたことになる(当時の発表では5720万kW)。計画停電も節電も必要がなかったことになる。こんな「予報」を毎日、1面で報道(?)しているマスコミも、また度し難い。当初、疑問に思い新聞各社(毎日、朝日、読売)に電話をした。「でんき予報が1面に掲載されていますが、あれは広告ですか? 記事ですか?」——担当者は、胸を張って(見えないが)、「れっきとした記事です」——呆れてものが言えない。

       福島原発事故記者会見             関西電力
     反原発町 暗殺指令

■ 読んでください
 政府や東京電力の欺瞞を克明に検証した『検証 福島原発事故記者会見』(日隅一雄、木野龍逸/著、岩波書店)は、上に書いてきた政府、東京電力の犯罪を詳細に報告している。読み進めていくと、両者の「犯罪」は明瞭になってくる。また、恐ろしいまでの政府の棄民政策を読み取ることができる。やはり「国家とは虚構である」、ということが理解できる。
 『関西電力「反原発町長」暗殺指令』(齊藤真/著、宝島社)。帯に〈ミステリーを超えた戦慄ノンフィクション!〉とある。惹旬を裏切らない衝撃の本である。内容は詳細に書かないが、読めば吃驚仰天だ。これが一流企業といわれている会社の実態である。是非、読んでいただきたい本である。                                  
■3・11以降の随感 
                                 
 3・11以降、その時々に思ったことや感じたことを認(したた)めてきた。精神の変調をきたした後だから、文意は乱れているが備忘のために録しておきたい。

*個人宅を「避難ホームスティ」に(2011年3月22日)
 大地震と津波が東北三陸地方を襲い、未曾有の災害をもたらしている。幾つもの町や村が忽然と姿を消した。死者の数は毎日、戦後最大を記録し続け不明者数も日ごとに増大を続けている。災害の全体像を見るには、あとしばらくの時間が必要である。刻下は、不明者の救出と被災者の心身の保護が第一優先である。支援物資も全国各地から集まり、交通網の切断も徐々に復旧し物資も被災地に向かっている。喜ばしいことだ。
 被災者の住宅支援に対して提案がある。
 家や家族を失った被災者や原発事故で避難を余儀なくされている人(家族)は、一時的に公民館、学校などに集団で避難生活を送っている。仮設住宅の建設や他の地方自治体の空き部屋提供もある。が、すべてのものを失った被災者には、即日常生活が営めない。それらを考えると、個人住宅を〈避難ホームスティ〉として提供できる家庭を政府の対策本部は募ったらどうだろうか。
 現状でも被災者は親戚、友人、知人宅に避難している人も多いだろう。しかし、それもままならない人もまた多いはずだ。受け入れの個人宅に対しては、公的な補助制度(義援金などから)を設けたらよい。受け入れ、入居はお互いの自由意思による。これらに伴う移動や手続きは受け入れ側の家庭のある自治体やボランティアが行う。余寒なお厳しい東北の地で避難生活を余儀なくされている被災者に対して、その避難場所からの避難こそが喫緊の課題ではないか。これくらいの互助の精神はこの国の人にはあるはずだ。
                               2012年2月15日記
                                  (ふじい・ゆういち)

 

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