■マスコミが操作した情報空間
 違憲状態(一票の格差)で行なわれた今回の衆議院選挙は、民主党が壊滅し自民党が圧勝した(投票率は2009年比約10P低い)。マスコミの情報操作も企み通りの効果を発揮した。最も争点とすべき脱原発、消費税増税、TPP、沖縄問題(オスプレイ、日米地位協定)などの政策課題を巧妙に摩り替えた。
  マスコミは戦後体制に組み込まれ、この67年間どれほど民衆(国民)を裏切り続けてきただろうか。1945年に自らの罪業(戦争協力=大本営発表)を総括できなかったマスコミは、60年安保での「七社共同宣言」を皮切りに、次々と恥ずべき役割を演じてきた。
 近いところでは3・11の東京電力福島第一原発の深刻事故の半年後、「原発輸出は民間で」などという社説を掲げた新聞(下の随感録)まであらわれた。散々、「安全神話」を煽ってきた”面目躍如“なのかもしれない。
 また、消費税増税法案の国会審議を「決められない政治」から脱却せよと囃し立て、法案成立への旗振り役を買って出た(裏では軽減税率を懇願している)。
 数え上げればきりがないが、上に書いたように今般の衆院選報道もひどいものであった。
 自らの失策(誤報)は隠蔽するのが習い性になっているのだろう。検察の捜査報告書が捏造であった「小沢裁判」(2012年11月19日、指定弁護士が上告断念、無罪確定)に対しての検証記事は見当たらない。人物破壊工作に手を貸しながら「反省文」も書けない始末だ。
 これがこの国のジャーナリズムの風景である。

    この国に生きて在ること恥ずかしい
    
民の声消え政治(まつり)は続く

■成熟国家の戦略こそ喫緊の課題
 3・11は文明史的な転換である。また、転換にしなければいけない。
 「脱原発」に対しては、様ざまな言説が飛び交い多くの人々を混乱に陥れている。原発をやめれば——・電気が足りなくなる・電気代が高騰する・温暖化が進む・企業が海外に逃げて雇用が失われる——これらすべてが嘘っぱちである。為(ため)にするプロパガンダだ。
 一つ一つに詳しい解説を付すのには紙幅が足りないが……電気は十分足りていると政府の資料が証明している。温暖化どころか寒冷化が地球の問題である。電気代は燃料費の高額買い付けをしているため若干の期間上がるかもしれないが正常になれば沈静する。国民経済に基盤を置かないで海外に出て行く企業の商品などボイコットすればよい。
 ほとんどの政党が景気回復(経済成長)を叫び続けていたが、この国は成長戦略から成熟戦略へパラダイムシフトすることこそ喫緊の課題である。
 こんなことも分からないで憲法改正や国防軍、TPPを叫んでいる政党のなんと薄っぺらで経世済民の哲学のないことか。
 成熟国家の戦略をデザインすることこそ、未来に生きる子どもたちに対する先行世代の責任であり、地球的規模の放射能汚染を惹起した償いではないか。
 現状でも収容能力を超える放射性廃棄物の貯蔵管理も目途が立っていない。今も国が法令で定めた被曝量をはるかに超える土地に多くの国民を置き去りにしたままである。そして、何十万年何百万年にも亘って無毒化できない核廃棄物を子孫に残すこと自体、「犯罪行為」である。
 この国は、沖縄に続き福島エリアも「棄民の土地」にしようとしている。たとえ国家財政が破綻の際に達しようと、福島復旧を訴え実行する「始末に困る人」は出ないものなのか。われわれが、生きる「物語」の文脈を変更すること、それが文明の転換である。

 

 「朝日」社説に疑問〈2011年8月23日〉
 本日(23日)、1面題字下のニュースガイドを一瞥(べつ)して「あれーっ」と言うか、一瞬、強烈な違和感が身体を通り抜けた。
 〈原発輸出は民間で〉—— 目は、先を急いで14面に直行した。
 記事は——政府は今まで官民一体で進めてきた「原発輸出」から手を引き、原発事故の収束に力を注ぎ、輸出は民間が主導すべき——と言う。
 《史上最大級の事故を起こし、原発のあり方が問われている時に、海外には国が先頭に立って原発を売り込む。これでは筋が通らない。そもそも原発事故が収束すらしていない現状で、政府にはそんな余裕はないはずだ。》
 その通りです。政府の対応は事故発生の初期段階から後手、後手に回り、回避できる放射能被曝を多くの住民に押し付けてきた。責任は重大である。しかし、その検証は今始まったばかりであり、徹底的に行なうべきだと考えます。
 《国内の原発メーカー3社(東芝、日立、三菱)には、もともと十分に国際競争力がある。官民一体で制約を受けるより、独自の技術力やネットワークで最強テームを組み、受注増に挑む。そのほうが、理にかなっている。》
 官民一体の制約とは「事故の際の賠償や他の分野での援助など、日本に不利な条件」なのでしょうか。政府が離脱することでそれらは緩和されるのでしょうか。そして「受注増に挑む」ことが良策なのでしょうか。
 現下の課題は、「原発輸出」の協力・協定を結んだ国や交渉をしている国に対して、東京電力福島第一原発の事故の教訓を生かし「原発と人類の共存は不可能」であることを真摯に話すことが《日本が国際社会にできる最良の貢献》だと、愚生は考えます。


                           2012年12月17日(ふじい・ゆういち)

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