えほん育児日記

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~絵本フォーラム第95号(2014年07.10)より~  第1回

家族の時間

私の憧れのおかあさん

 「むかしあるところに、こやぎを七ひきそだてているおかあさんやぎがいました。そのやぎがこどもたちをかわいがることといったら、どのおかあさんにもまけないくらいでした。」(『おおかみと七ひきのこやぎ』グリム童話、フェリクス・ホフマン/え、せたていじ/やく、福音館書店)
 今の私の憧れのおかあさんです。我が家の子どもは七人でなく三人。それでも絵本の最初のページのおかあさんやぎの落ち着いたなんとなく上品な立ち姿とは程遠く、家族皆元気でにぎやかに育ってくれていることに感謝、という日々を過ごしています。現実と理想の距離はさておき、この絵本の絵とことばのおかげで、子どもたちをより深く賢く愛情をもって育てていきたい、という気持ちを心に抱き続けられることは、私にとってとても大事なことです。
 私が素敵なおかあさんになりたいと思ったのは、いったいいつ頃からだったでしょうか。先日、実家の本棚から懐かしい本を手にとって、はっと気づいたのです。少女の頃の私が、主人公でなく、ある家庭の「おかあさん」の描写に強く魅かれていたこと。そして、たくさん読んだ伝記など、ほかの作品の中にも、あんなふうになりたいとイメージをふくらませる女性が何人もいたこと。いつの間にかすっかり忘れていたけれど、私はずっと昔から、お話の世界や本の中のたくさんの人たちを自分の将来像として思い描き、時に背伸びして生きてきたのでした。
  現実に大人になるにつれお話の世界は遠ざかりましたが、でも、いつかいいお母さんになりたいという理由でとった保母資格で、今は仕事をしています。そしてほんとうにお母さんになった私は、赤ちゃんとの初めてづくしの毎日に笑ったり感激したり心配したり、なりたいおかあさん像なんて考える余地なし!ただただ幸せも悩みもこれまでの倍以上の波の中で、一生懸命の日々を過ごしてきました。私の子育てはまだまだ途上ですが、これから一年間、時にこれまでを振り返り、時に先を思い描いて綴ってみたいと思います。


子どもの成長の節目に思うこと
家族の時間 「小さな社会人」ということばを教えてくれたのは、息子の通った小学校です。保護者と離れて地域の方と接する場面などで、子どもであってもマナーを身につけた態度が必要だという意味です。下の子二人は長男とちがう小学校に上がりましたが、同じように伝えてやりたくて、各々ちょっぴり小学生の顔になってきた一年生の夏休み前、市立図書館で子どもの名前の貸し出しカードをつくりました。我が家のある市では「二週間で読みきれる冊数」というきまりなので、家族に一枚しかカードがなくても冊数制限はありません。ですが、自分で読みたい本をいつでも借りてよい、但し公共の本を責任をもって扱い期限を守って返すこと、カウンターの方ときちんと挨拶などを交わすことを約束して改めて図書館デビューです。ちょっと誇らしげに、でもママといっしょの時はママのカードでいいよ、と恥ずかしがったりもしていた子らも、「貸し出しお願いします」「ありがとうございました」と係の方の顔を見てやりとりしています。大きくなったなと思います。私が仕事で平日はなかなか一緒に図書館に行けなくても、子どもたちには、どんどんいろんな本と出会ってほしいと願っています。近頃では、図書館のたくさんの本の中から子どもがどんな本を選んでくるのか、それもまたとても興味深いところです。

子どもを真ん中につながって
 大人になるまでに、どんなことをどんな時期に教えていくのか。何をいちばん大事なこととするのか。日々の生活の慌しさに、あらためて考えることもなく過ぎていってしまいそうです。でも、子どもの成長の区切りなどには、子どもたちひとりひとり違う育ちの道筋を追い、大事にしてやりたいことを話し合う。突発事件対応もあるけれど、何もないときにこそ、子どもとの一対一の場や、子どもたちの寝顔を眺めた後の大人の時間も演出して、子どものことをあれこれ話す。家族が育っていく大事な時間だと思うのです。
(くまだき・かよ)

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