mainichi2015-1-22

毎日新聞 
2015年01月22日(木)
くらしナビ ライフスタイル

電子絵本 親子で触れて

「生身の関係大事」・・NPO法人「絵本で子育て」センターの森ゆり子理事長

(前略)

●「脳が活性」結果も

ITメディア関連のシンクタンク「インプレス総合研究所」によると、13年度の電子書籍市場規模は、電子雑誌を合わせて初めて1000億円を超えた。
最近は、電子絵本の優位性を示す研究結果も発表されている。
早稲田大理工学術院の河合隆史教授(人間工学)らの研究チームは11年、絵本出版や遊具販売などを手がける「フレーベル館」と共同で、4歳児の母子54組を対象に電子絵本の読み聞かせの研究を実施した。同じ絵本を@紙媒体で、母親が読むA電子媒体で、母親が読むB電子媒体で、読み聞かせのプロの保育アドバイザーが読んだ声の録音を聞かせる─の3種類で、子どもの脳の血流や心拍数を計測して比較した。すると、Bのプロの読み聞かせが、脳血流などの活性化への反応としては最も顕著だったという。
抑揚の付け方など、読み聞かせの上手な音声に反応したと考えられ、河合教授は「電子ならではの特性を生かし、教育効果を高められる可能性がある」と話す。
また、京都大霊長類研究所の正高信男教授(心理学)らの研究チームも14年5月、同じ内容の絵本を紙と電子で読み聞かせた場合、読み上げた文字を赤く表示するハイライト機能をつけた電子絵本のほうが、子どもが覚える文字数が増えたとする研究結果を発表した。
正高教授は「今は共働き家庭も増え、遅くまで仕事する親も多い。くたくたになって仕事から帰宅し、自分で読んであげる元気はないけれど子どもに本を読ませたいと思う時くらい、電子絵本を使ってもいいのでは。電子絵本が紙より優れていると言うつもりはないが、道具は中立。あとは使い方次第」と話す。

●「生身の関係大事」

一方で、電子絵本に否定的な意見も根強い。絵本を使った子育てを推奨するNPO法人「絵本で子育て」センターの森ゆり子理事長(62)は「書籍の電子化がどれほど進んでも、紙の絵本の読み聞かせの代わりにはならない」と話す。「子どもに肉声や息遣いを届けることで、絵本を読むお母さんやお父さんが感じている喜びや悲しみ、怒りを共有できる。文字を覚えるのが少しくらい早くなっても、そうした生身の人と人との関係がなければ、子どもの成長にどこかいびつなものが出てくるのではないか」 また、絵がアニメーションのように動くため、子どもたちが自由に想像力を働かせず、刺激の強い媒体に慣れ、受動的になってしまうことも危惧している。

(後略)

前へ次へ 新聞記事インデックス

絵本で子育てセンター