ぼくの読み聞かせ教室



 いよいよ10月に入った。もうこうなったら、運を天に任せて前へ進むしかない。前回で示した講義の概要を一応は念頭に置くものの、出たとこ勝負でやってやろうと心に決めたら、多少気が楽になった。前期の「文学」で一応うまくいったので、今回も学生に感想や質問をしっかり書かせて、それをまとめたり、質問に答えたりする形で講義を進めていくことにした。

 オリエンテーション、導入をすませて、イソップ童話から始めることにした。『北風と太陽』『おおかみがきた』『ライオンのわけまえ』の3編を読み聞かせて、「面白さ」「共感」「説得力」の3項目についての5段階評価と、寸評を書かせた。最初の読み聞かせは、一応うまくいったと思う。ホッとした。提出されたプリントにも確かな手応えが見られた。 かわいいイラスト入りのもの、裏面にまでびっしりと書かれた感想はうれしかった。「いつもより静かで少し気味が悪かった」という感想もあった。7割程度は関心をもってくれたかなと思う。

 一番人気は、『おおかみがきた』だった。「ウソをつく子には、この話を読んで聞かせます」と4人が書いていた。そこで、〈読み聞かせのポイント〉として、「問題を抱えた子どもに読み聞かせるお話を問題別に準備しておこう。ただしこれは奥の手で、日頃は教訓的なお話よりは保育者自身がおもしろいと思うお話を読み聞かせよう」という項目を示し、併せて朝日新聞連載の「読み聞かせの極意」の一部を紹介しておいた。
 『ライオンのわけまえ』は予想通り不人気だった。これを取り上げるについては、深い訳があるのだが、今回は省略して次回グリム童話で取り上げることにしよう。この話に対する反応は予想していたつもりだが、それにしてもいささかがっかりした。いわく、「ライオンはひどい」「キツネはずるい」「ロバはばかだ」「長いものには巻かれろということか」という感想がほとんどであった。「無いものねだり」という気がしないでもないが、紋切り型というか、想像力が乏しいというか、そんな気がした。「ここで踏ん張って、一押し、ふた押ししてみようか」とも考えたが、最初から“深追い”はすまいと踏み止まることにした。「心余りて言葉足らず」で分かりにくい一編となってしまいました。

「絵本フォーラム」21号・2002.03.10

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