リレー

ベトナムの子らはいま
(山形市たつのこ保育園園長・阿部啓一)


写真  今、たつのこ保育園のホールには、ベトナムの古都フェ市の子ども達の絵があふれています。ストリートチルドレンだった過去を持つ6〜14歳の子ども達の絵。「たつのこ」の子どもたちにとってお兄ちゃん・お姉ちゃんの作品は、明るい南国の色彩があふれ、ゾウや水牛などめずらしいものがたくさん描かれています。でも、その絵に添えられたベトナムの子どもたちの文章には、ストリートチルドレンとして暮らした過去のことがあふれています。
 同じ時代を同じアジアで生きる子どもたち。一方は「生きる」ことに必死で取り組まざるえない環境にあり、他方は食べるものが気軽に手に入り、テレビ・ビデオなどのその場だけの心地よい時間が流れ、より早く、より知識豊かにとせっつかれながら生きる場にいます。その育つ環境は、子どもたちが選択したからではなく、たまたまそこに生まれたがために出会っていること。子どもたちの責任ではありません。 中島みゆきの『誕生』の一節に「生まれたとき だれでも言われたはず 耳を澄まして 思い出して welcome…」。子どもたち、誰もがその誕生を祝福され、本当の子ども時代が保証されること、そんな世界が広がったら子どもたちだけでなく大人たちにも幸せな思い出が広がるでしょう。そう考えると、アジアの子どもたちとの交流もますます大事な時代なのだなぁ、と思えるのです。
 まもなく「たつのこ」の卒園児たち(中学生)有志による「アジアの子どもたちと出会う旅」の準備が始まります。いろんな出会いの予感がする日々の始まりです。
絵本フォーラム18号(2001年9.10)より

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