リレー

母として、保育者として
(山形・キンダー保育園主任保育士・小関敦子)


写真  21世紀、弥生3月。末娘はキンダー南館保育園の修了証書を手にした。私がキンダーに勤務して12年目。そして、長女、長男、次女をキンダーに預けて、保護者として10年の歳月が過ぎていた。親としての思いと、保育者としての思いが何度交錯したことだろう。早番勤務のときは、まだ瞼の開かない娘をおんぶし、園児を迎える。「先生も子どもさん小さいのに、大変だよね。私も頑張らなくちゃ!」の声に逆に何度励まされたことか。遅番勤務のときは、お迎えに来てもらい、ニコニコ笑顔で帰っていくお友達の姿に「自分も帰りたい」と大泣きされ、遅くまで娘と遊んでくれた保育者仲間に助けられた。娘が少し大きくなり、「ママが私だけのママだったらいいのにね」と言われ、うろたえる私を導いてくれたのは、人生の先輩でもある、園長先生はじめ先輩の保育者たちであった。家庭の様々な出来事に悩みながらも何とか乗り越えられたのも家族の協力と、たくさんの人の暖かな手があったからこそである。
 一人で子育てしているのではない。みんなが私を後押ししてくれているんだ。みんながこの子たちを見ていてくれているんだ。なんて幸せなことなんだろう。そんなことを感慨深く思うとき、ふと保育者としての自分の役割が、とても大きいことに気づく。そう、私も保育者として、子育てのプロとして、少しでも力になれたら…。
 子どもを持ち仕事を続けて行くことの大変さに、くじけそうになる人もいるかもしれない。いろんな思いのなかで助けを求めている人がいるかもしれない。同じ人として、親として、何かを伝えたい人もたくさんいるだろう。まだまだ勉強中の保育のプロ、そして親としても息子や娘に支えてもらいながらではあるけれど、何かができるかもしれない。
 いま、まさにそんな思いの自分を奮い立たせ保育に取り組んでいる。子どもをめぐる環境、社会的な問題はとても大きいことではあるが、一人一人の子どもたちを大事に育て見守ることで何かが開けると思う。わが子を信じ、仲間を信じ、子育ての連携の輪を拡げることで、子どもたちの生きて行く未来が明るいものになるにちがいない。そう考えると不思議な力がわき出てくる。母として、保育者としての自分を信じ、これからも一生懸命育てること(子育ても、自分育ても、仲間育ても)に力を注いでいきたいと思う。
絵本フォーラム19号(2001年11.10)より

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