リレー

読書と正しい生活は勉強と深い関わり
(山形・学習塾経営・渡邊 千穂)


 最近、子どもの国語力の低下が目立ちます。長い文章を読むことが苦手です。感情や情景を読みとることはもちろん、文章の意図を読みとることすら困難です。そのため、数学では計算問題はよく出来るのに、それが文章になると全くわからなくなります。英語の訳は機械が訳したもののようになります。国語力がないため、言葉を置き換えたり、言いまわしを使うことが出来ないのです。
 原因の一つに、あまり本を読まないことが挙げられます。書き言葉に出会う機会が少ないので話し言葉に偏っているようです。この頃の話し言葉は妙な略をしたものが多く、誰もが理解出来るものではありません。もちろん言葉は生きているものですから時代毎に変化するのは当然だと思いますが、あまりぐるぐる変化させてしまい相手に伝わらなければ、本来伝達手段としてある言葉の意味を失ってしまいます。書き言葉に出会わない事は、相手に伝える言語力、表現力に乏しくなり、言語力を持たない子どもが上手く自分の感情を伝えられないのもうなずけます。真のコミュニケーション力とは、きちんと言語化出来る事かもしれません。それが出来れば最近見る悲しいニュースも減るような気がします。
 文章から感情を読みとれないのには、他人との関わりが大きく影響しているように思います。子どもたちに尋ねると、家の手伝いをしていない子がほとんどです。家庭は子どもたちが出会う最初の集団であり、集団で生活している人間の基本的なルールを学べる場であると思います。家の中で役割を持つことは、集団の中で生きる自分を認識したり、他人の為に働くことで相手を思いやる心を育て、また後の大きな社会という集団への適応力を身につけるチャンスです。食事の後すぐ自分の部屋へ行き会話が無い個人よがりな毎日や、労せず小づかいをもらい、与えてもらうだけでは生きる力が育ちません。まず身近な他人(自分以外の人)を意識することからです。
 きちんとした生活をすることで変わる子も少なくありません。「靴を揃えようね」と声をかけると半年位で全ての子どもが自ら出来るようになります。身の回りに気を配ることで文章にも注意深くなったり、何故かと原因を追う探究心が生まれたりします。すると理解力もどんどん伸びていきます。読書と正しい生活は勉強にも深い関わりを持っていると思います。
絵本フォーラム25号(2002年11.10)より

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