リレー

絵本に魅せられて
(岡山・早島町立図書館長・渡部 秀人)


 ある日の「おはなしの時間」のことでした、図書館常連のお父さんがこられ、絵本を聞いていただくことになりました。準備していたいくつかの絵本を読んでいるうちに、4〜5才の女の子とそのお母さんたちも加わって、いつものような「おはなしの時間」らしくなってきました。最後は、秋にふさわしい「つきのぼうや」(イブ・スパング・オルセン/さく、やまのうち きよこ/やく)を読ませていただきました。ゆっくりと、そして心をこめて読ませていただき、最後の「おつきさまは とても しあわせです。」という頃にはなんとも言えない温かい雰囲気になりました。
 いつもなら、「今日はこれでおしまいです。またこの次もよろしくお願いします。」ということにさせていただくのですが、この日はちょっとちがったかたちになりました。参加いただいた方との「子育てと絵本」についての意見交換が、自然なかたちで始まったのです。お父さんからは、「「ぼうぼうあたま」(ハインリッヒ・ホフマン/さく、いとう ようじ/やく)はよく利用しました。子どもたちにせがまれて、何回も何回も読んだものです。今は、わが家の宝ものになっています」といったお話が紹介されました。しばらくは、「ぼうぼうあたま」のお話やら、それにまつわる子育てのエピソードなどをお聞きし、「おはなしの時間」を終えることができました。そらに、うれしいことに、何日かたったある日のこと「ぼうぼうあたま」を図書館へ持ってきて下さったのです。リズム感のある訳文と素朴な絵の魅力に引き込まれ、わくわくしながらいっきに読ませていただきました。
 さて、図書館運営のなかでの児童サービスは、今後ますます重要になってくるものと思います。絵本は児童の目線に表紙見せで置く、芸術的にすぐれたものの収集に努める。さらに、絶版になったよい絵本はチャンスをとらえて可能なかぎり収集したいと思います。これからも、利用者の皆さんに育てていただきながら、より多くの子どもたちと豊かな絵本の世界を共有したいと思っています。
絵本フォーラム25号(2002年11.10)より

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