リレー

牛若丸と弁慶
(兵庫・赤穂市立赤穂西小学校校長・安井 英機)


 当市内の小学校の修学旅行先は奈良・京都方面。電車やバスを利用しての移動が中心になります。ここ最近、その観光バスに乗っていて気付かされることがあります。京都の五条大橋に近づくと、バスガイドさんが「牛若丸と弁慶」のお話をされます。そのとき、マニュアルを使ってたどたどしく読みあげるバスガイドさんが増えているのです。
 私にしますと、「牛若丸と弁慶」の話は“誰でも知っている”という意識があります。本屋に行けばその種の絵本があるし、家庭でも親が読み聞かせ等をしているはずだ。教科書にも載っている。それなのに、どうしてきちんと話ができないのだろう。そうした疑問を持っていたのです。
 あれやこれや思っているときに、ほるぷフオーラムの森ゆり子様を招聘して講演会を持つ機会がありました。その講演を通して、「牛若丸と弁慶」の話のできない理由がわかってきたような気がしました。
 今、私たち大人や親が子どもたちに対して、静かにお話を聞かせてやったり、いい絵本の読み聞かせをしてあげていないのです。買い求めるにしても、同じ内容ならばと安価なものを選んだり、挿絵を安易に軽く見て、絵と言葉がちぐはぐなものを選んだりということを繰り返していました。私も読み手として、そのときの感情に走って子どもの想像を大切にする読み方をしていたかと反省させられました。
 子どもは耳から言葉を聞き、目で挿絵を見て自分の世界をつくっていきます。絵本の読み聞かせは子どもの心をつくっているという自覚を持つことが大事なのだとわかりました。
絵本フォーラム28号(2003年5.10)より

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