リレー

子どもに愛情という名のおくすりを
(大阪・前田針灸接骨院・前田 京子)


 私たちの針灸治療院には毎日、様々な病気でお悩みの患者様が来院されます。1歳に満たない赤ちゃんから90歳を超えたお年寄りまで、その幅は広いのですが、他の治療院と違うところは、子どもの患者さんが多いことです。
 頭部(脳神経)を中心に、全身のつぼの中から患者様の病状に合ったつぼを選択し、そこに細く短い針を刺します。そして、その針に1〜6ヘルツの弱い電流を流して、10〜15分間刺激を与えます。それによって弱った脳細胞を活性化させ、脳神経の伝達をよくするという院長の理論に基づいて治療をしています。
 その治療中、泣いている子どもさんの少ないことにびっくりされることでしょう。それは、付き添いのご両親に絵本を読んでもらっているからです。初めて来られた患者様には、私のほうから絵本のすばらしさを説明し、子どもさんに読んであげます。すると、それまで泣いていた子もいつの間にか絵本にすっかり集中してしまい、泣きやむのです。それを見て納得されたご両親は、次回から治療中に絵本を読んでくださいます。
 治療中、針を刺したままベッドにじっとしていなくはならないというつらい時間が、ご両親が絵本を読んでくださることにより、「楽しくうれしい」時間に変わります。その「楽しい、うれしい」という思いは、脳内モルヒネを子どもさんみずからがつくり出すことにもつながり、さらに針の効果も高まります。絵本の楽しさを知った患者様には、絵本の無料貸し出しも行い、ご家庭でも絵本を読む習慣をつけてもらうようアドバイスさせていただいています。
 私たちがどんなによい治療をしても、ご両親の愛情に勝る治療法はありません。「絵本の読み聞かせ」が針治療の効果を高めると同時に、ご両親の心のいやしになっていると言えるので、これからも続けていきたいと思っております。
絵本フォーラム34号(2004年05.10)より

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