リレー

『大変な時』は思い出のいっぱい詰まった時
(学校法人西須磨幼稚園 園長・岸田元子)


 本音を吐くと、フルタイムの仕事を持ち続けての子育ては本当に大変でした。今は、2人の子どもも大学生となり、自分の目標に向かってそれぞれの道を歩み出すようになっています。
 仕事から帰って、保育園に子どもを迎えに行き、夕食をつくり食べさせ、風呂に入り、寝かせて、そして洗濯、片づけ、やっと寝たらすぐ朝が来て……の毎日。子どもがぐずったり、言うことを聞かない日などは、イライラが募り爆発!!
 しかし、子どもたち2人が右と左のひざに乗り(大きくなると、2人がひざを取り合って)、絵本を読んだひとときは、私にとってもあたたかい安らぎの時でした。
 「お母さん、何年生までおひざの上で絵本を読んでくれるの?」
 「サンタさんは、何年生までプレゼントをくれるの?」
 今はそんな夢のようにかわいい会話のやりとりも、2人のぬくもりをひざの上で感じることも、したくてもできないほど大きくなってしまいました。
 子育ての大変なまっただ中にいるときは、「なんて大変なの! 早く大きくなってほしい」と思ったものです。でも、振り返ってみれば、あっという間に過ぎてしまいました。あのときは精一杯に子育てをしたつもりですが……、今はもっとふれあい、もっと楽しみ、もっと抱きしめておけばよかったとも思います。
 今、子育てまっ最中のお母さん・お父さん、子どもの宝箱に今のこの時期にしかできないたくさんの思い出を詰めてあげてください。子どもたちは、自分の宝箱に詰まったその思い出を、自分の子育ての糧とすることでしょう。そして、お母さん・お父さんの宝箱にも、子どもとふれあって過ごしたたくさんの思い出を詰め込んでほしいと願っています。
 私にとって、あの『大変な時』は『思い出のいっぱい詰まった時』となっています。
絵本フォーラム41号(2005年07.10)より

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