こども歳時記
〜絵本フォーラム第24号(2002年09.10)より〜
食欲の秋ですか? 読書の秋ですか?
ざぼんじいさんのかきのき
『ざぼんじいさんのかきのき』
(岩崎書店)
 子どもと一緒に過ごした暑い暑い日々もやっと一段落しました。ほっとしたお母さんも多いのではないでしょうか。皆さん、お疲れさまでした。このまま食欲の秋に走らないように、読書の秋といきましょうか。
 夏の疲れを、ちょっと笑って気分転換したい人には『ざぼんじいさんのかきのき』(すとうあさえ・文、織茂恭子・絵/岩崎書店)なんていかがでしょうか。けちのざぼんじいさんと、何でも楽しくしてしまうとなりのまあばあさん。笑った後で感じたことを忘れないでいたいものです。
 眠れない夜には、長編の児童書にも挑戦してみてはいかがでしょうか。完訳ものの『ガリヴァー旅行記』では、小人国の他にたくさんの国へ旅した話もあります。ガリヴァーがどんな国々へ行ったのか興味ある方はぜひ、読んでみてください。
 しっとりした時間を過ごしたい人は、詩集を開いてみてはいかがでしょうか。
詩はむずかしいと思っている方にもお勧めしたいのが、以前小紙四面の「わたしの絵本体験記」にも載った平岡淳子さん、あみちゃん母子の『半熟たまご』(平岡淳子、平岡あみ/河出書房新社)です。

  『おねがい』
  わたしは   まだりっぱな   こどもなんだから
  おとなあつかい   しないでね
  へんてこりんな   おとなとは   ちがうんだから

あみちゃんの言葉が、たくさんの大人に届いてほしいと思います。
半熟たまご
『半熟たまご』
(河出書房新社)
「りっぱなこども」になるために
 子どもには子ども時代を満喫する時間が必要です。そうやって時間をかけてだんだんと成長して大人に近づいていくのです。外で走り回る。友達と遊ぶ。風・光・音色、自然を肌で感じる。それから親子でふざけあったり、自分に向けて語りかけられた声につつまれる安心感、そして幸福感。
 誰にでもあるはずのあたりまえの時間が、とても大切なものだったと今、見直されてきています。幼い頃から長時間映像にさらされている子どもたちは、そんな大切な時間を奪われているのです。さまざまな体験の積み重ねの中で感情や情緒、そして他者への思いやりも生まれてくるのではないでしょうか。豊かな体験ができる環境が少なくなってしまった時代だからこそ、絵本の力が期待されています。与えられた想像の世界ではなく、絵本の中に入り込み自分のリズムで考えた想像の世界が、子どもの心の奥深くで育んでくれるものの大きさを多くの大人に知って欲しいものです。

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