こども歳時記
〜絵本フォーラム第28号(2003年5.10)より〜
子どもとお散歩してみましょう
 日を追うごとに長くなっていく夕暮れ時、ふと散歩を思い立ちました。週末だったので、少しくらい夕食が遅れてもいいかなと思い、子どもたちに「久しぶりに、お散歩行かない?」と誘うと、行く行くと喜んでいる様子です。一番近くの公園まで手をつないだり、追いかけっこをしながら歩きました。自分のペースで歩くと、いつもと違った目線や気持ちになり、自然に子どもとの会話にも笑いがこぼれます。公園では、駆け回る子どもたちをベンチに座って見ていました。夕暮れのあかね色から紫、濃紺の夜へと空が移り変わる時を感じたのは久しぶりでした。一番星も顔を出しました。BGMは子どもたちのはしゃぐ声です。空の色と同じように、忘れかけていた素敵なひとときを体験できました。

『わたしはだいじなたからもの』
(ほるぷ出版)
 ところで、最後にお子さんを抱っこしたのはいつですか。手をつなぎ頬にふれ、頭をなでたのはいつですか。笑いあい、冗談を交わしたのはいつだったか、はっきりと思い出せますか。
 『わたしはだいじなたからもの』(カール・ノラックぶん、クロード・K・デュボワえ、河野万里子やく/ほるぷ出版)では、新学期を迎えたロラが、暖かい家庭からお友達のいる社会へと一歩踏み出します。そこは今までの生活と違い、少し戸惑いますが、家庭での愛情をエネルギーにしてロラは成長し、乗り切っていきます。
 日常の些細な子どもとのふれあいが愛情というエネルギーになり、子どもたちは大人へと成長していくのではないでしょうか。そして、親である私たちも子どもの成長した姿を感じたときの幸福感をエネルギーにして、愛情を注いでいけるのではないでしょうか。
世界に一つだけの花を咲かせよう
世界に一つだけの花  一人一人違う種を持つ
その花を咲かせることだけに  一生懸命になればいい
 最近耳にした歌謡曲の中で、印象に残った歌詞の一部です。色々な考え方があると思いますが、自分らしく、命を大切に生きるという気持ちが感じられる詩でした。いつの時代でも、どこの国でもそれが一番難しいのかもしれません。だからこそ、この詞が心に響いてくるのかもしれませんね。
 『みんなちきゅうのなかまたち』(イングリット&ディーター・シューベルト作、よこやまかずこ訳/光村教育図書)は、様々な動物たちの誕生から死、死から誕生へ、そして生き抜いていく智恵を上手く表現してくれている絵本です。共に地球で生きている個性ある動物たち。人間もその仲間の一員です。
 世界に一つだけの花のこと。共に生きている地球上の仲間たちのこと。一つとして大切じゃない命などないということを、絶対に忘れないでいましょう。

※『世界に一つだけの花』作詞:槇原敬之

『みんな ちきゅうの なかまたち』
(光村教育図書)

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