こども歳時記
〜絵本フォーラム第44号(2006年01.10)より〜
あけましておめでとうございます
   あけましておめでとうございます。願わくは、心穏やかに過ごせる1年であってほしいと思います。せかせかと追い立てられない時間を意識してつくりたいと思います。
 そう思ったときにふっと、家にあるまだ読んでいない本が目につきました。『葉の裏で冬を生きぬくチョウ』(高柳芳恵/文、村山純子/絵、偕成社)。地味なタイトルのこの本を手に取る気になったのは、3人の子を持つ主婦の10年間の観察記録ということがわかったからでした。
 時には子どもと一緒に、にしても10年間とはすごいと思いました。ウラギンシジミの観察記録を読みながら、私は自分の子育てを振り返っていました。「こんなに身近なところで冬をこすチョウなのに、いままで気がつかなかったことがふしぎなくらいでした。
 でも、みようという気持ちがなければ、なにもみえてこないのでしょう。〈みる視点〉をもつことによって、みえなかったものがみえてくる」(本文より)。見る視点に気づくことで見つけるコツがわかるようになるのですね。子育て中の方は、せめてあとがきだけでも読んでほしい。科学の本ですが、とっても育児の参考になりますよ。

『葉の裏で冬を生きぬくチョウ』
(偕成社)
子どもと話しをしてますか?
 「こんなこと、してはいけないってことが、なんでわからないの」という事件が、今後も増えていきそうな気がするのは私だけでしょうか。
 人としてのあるべき姿を伝えられる大人があまりにも少ない。大人たちが、それは変だ、おかしいよ、間違っているよという判断を子どもたちに示して、繰り返し繰り返し伝えていくことで、成長とともにわかるようになるのではないでしょうか。
 大人も子どもも、何がそんなに忙しいのか、繰り返し伝えていくその時間、親子で話をする時間も減ってきている中、一方的に親が指示・命令をするだけで、会話とはほど遠いご家庭も少なくないのではないでしょうか。まず子どもの言葉を聞きましょうよ。子どもの話を聞きましょう。
 そして、一緒に笑ったり、怒ったり、考えたりする中で、伝えなければならないことも伝わっていくのではないでしょうか。見えなかったことが見えるように、気づくようになるのではないでしょうか。
 うまく話を聞けないお母さん、お父さんは、ゆっくり絵本を読んであげてください。大人がゆったりのんびり温泉につかっている気分や、寒い冬にあったか〜い布団に潜り込んでいるような、シアワセな時間……。
 きっと絵本を聞いている子どもは、そんな時間に包まれていると思いますよ。
 満たされて幸せな子が、どうして他人にイジワルをしたくなりますか。受け止めてもらえない、私なんかどうなってもいいと考えてしまう子や、睡眠不足や光刺激でイライラしている子が、とても増えている気がします。
 共感してくださった読者の皆さん、どうかこの1年、「子どもの話を聞く・聴く」ことを心がけましょう。心穏やかに過ごせる1年にするためにも。

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