私の絵本体験記
「絵本フォーラム」25号(2002年11.10)より
絵本に思い出と成長を刻む生活
西村 多可子さん(福岡県前原市)

写真  読み聞かせを始めたのは現在4歳の娘が生まれて間もない頃でした。母親の私自身が、この幸せなひとときに夢中でした。目についた本を買いあさり、気がつくと頂きものなどを含め120冊近くの本が家にありました。このまま手当たり次第に本を集めれば、際限がないことに気付き、図書館・文庫通いの生活へ。月に10〜30冊の本を借りてきては片っ端から読む。そして読み聞かせの素晴らしさを説かれれば、わが家は大丈夫! と胸を張っていたのでした。
 やがて、娘の保育園入園、次いで第2子の出産などの変化が訪れ、思うように読み聞かせタイムをとれなくなってしまいました。やっとの思いで捻り出した僅かな時間に手に取ったのがつまらないハズレの本だったらがっかりです。読むもの全てが上質であるなら、手に取る一つ一つが間違いなく傑作ならば、短い時間でも親子共に、どんなにか充実したひとときを過ごせるだろう…。ありえないことのようでしたが、願いは叶えられました。『ほるぷこども図書館』との出会いです。
 待ちに待ったその日、届いた4つのダンボール箱。お宝を1冊づつ取り出しボックスに収めながら、かつて借りて読んだことのある本をいくつか見つけては、娘に「これ、おもしろかったよね?」「……」「憶えてないの?」「…うん」あんなに喜んで何度もねだったクセに、親子で一緒に感動したことも所詮、借り物だったのか。今までの読み聞かせって親の自己満足だったの? と自問したのでした。ともあれ、並べ終わった本を目の前にした娘の輝く顔、はしゃぐ姿。早速「読んで」と持ってきます。この時始まったのです。ずっと私たちと共にあるこれらの絵本一冊一冊に思い出と成長を刻む生活が。
 あれから2ヶ月。今日の娘は、どの本を持ってくるのでしょう?大丈夫!うちの本棚には、今日の彼女の気持ちを代弁する本がきっとあるはずですから。
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