私の絵本体験記
「絵本フォーラム」40号(2005年05.10)より
絵本がくれたやさしい時間
多田 恵理さん(山形県山形市)

写真  2歳の娘は、「何したい?」と聞くと、決まって「ビデオが見たい」と言っていました。夫も私も仕事をしているとは言え、自分たちに都合のいい育児をしているからだろうか……。育児に不安を感じていたときに、『ほるぷこども図書館』に出会いました。
 読み聞かせを始めたころは、娘と心から向き合い、楽しい時間が過ごせればと思っていましたが、絵本がもたらしたのは楽しい時間だけではありませんでした。
 『はらぺこあおむし』を読んだとき、娘は「虫さん、どこに行くの? 木から落ちない?」と質問してきました。どんなことを想像しているんだろうと、私をわくわくさせました。絵本によっては、「かわいそうだね」と悲しい顔をしたり、「よかったね」と私の手を握り、飛び跳ねたりします。絵本を通して娘がいたわる気持ちをちゃんと理解していると知り、とてもうれしくなりました。
 最近は、私が家事をしている間に、夫が絵本を読んでくれることもあります。そんな2人の姿を見ていると、私も心がいやされ、あたたかい気持ちになります。「なんか幸せだなぁ」と感じるひとときです。
 毎日決まった時間に、娘が選んだ本を読んであげることが理想ですが、今は自分にゆとりがあるときだけでもと、マイペースで読み聞かせをしています。娘もみずから絵本を取り出すこともありますが、関心がないとき、絵だけ見たいとき、じっくり聞きたいときと、さまざまです。でも、娘が私たちと一緒に過ごす時間の中に、絵本を読んでほしいという選択肢が加わっただけでも、私にとってはすばらしい、大きな変化です。
 絵本がもたらす、楽しく、そしてやさしい時間を、これからもずっと大切にし、育てていきたいと思っています。
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