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報告者
東京3期生
黒岩 真水子
〜  読み聞かせについて  〜 第2回

2007年7月21日(土)
飯田橋レインボービル

主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・ほるぷ出版・理論社
特別協賛:ラボ教育センター

 第 2編「絵本講師・養成講座」基礎課程A「読み聞かせについて」が7月21日、東京飯田橋レインボービルで開催されました。 全国各地から集まった 41名の受講生の朝の挨拶にも意気込みが感じられました。そして、お互いの再会に心を解きほぐしながらも、講座が始まると一言も聞き漏らすまいと真剣な眼差しを向けました。

 講演に先立ち、司会の中谷資子氏より嬉しいニュースが 2つ伝えられました。
 まず、作家で大阪国際児童文学館名誉館長の中川正文氏が今年度から「絵本で子育て」センターの顧問に就任されたことです。今まで名誉会員であられた氏に更に期待も大きくなることでしょうが、いつまでも元気にご活躍されますことを願ってやみません。受講生一同拍手で喜び合いました。

 また、批評家でエッセイストの飫肥糺氏の著書『たましいをゆさぶる絵本の世界』(「絵本で子育て」センター)を 6月25日に刊行したことです。
  本書は氏が1000編の絵本を読み、その中から氏の心を捉え永く読み続けられている作品40編を選び収録されています。氏が真摯に絵本に熱意を向けられたご尽力の賜物だと思います。同時に、本作りに心込め携われた皆さまの愛の結晶なのだと感じます。 帯の惹句や表題通りに心を委ねられる書であり、1冊で2度オイシイ書かも知れません。
  どの章からでも手軽に読めて受ける感動は計り知れない。受講生にはこの先大きな影響を与えてくれる必携の一冊だと考えます。会場では多くの受講生が手にし、嬉しくなりました。

 午前の講演は飫肥糺氏の「絵本で育つ親と子のコミュニケーション」でした。
  氏はまず先に紹介された著書に言及し「巧みな構成で、いまだ類のない論文の如き傑作である」との出版に携わる盟友からの感想の披瀝に謝意を表され、感無量の面持ちでした。 言葉を次ぎ「子どもの頃、自然のなかで生きる知恵や礼節を学んできた」と幼少時に思いを馳せられました。
  氏の体験があったからこそ、本書が生まれたことに受講生も感銘を受けた様子でした。そして「本書で生き方の何かを掴み出してほしい」と願われた一言に皆熱く頷いたのでした。

 氏は「かつての子どもがおかれた劣悪な環境は、子どもという概念も持たれず、小さくても大人と同等の労働と労働時間を担わされていた時代があった」と端を発し、以後印刷産業の発展から時を経てフランスの思想家ルソー( 1712-1778)の小説『エミール』(ルソー/著、今野一雄/訳、岩波書店)から、エミールなる少年の教育論について語られました。
  この名作が教育界に及ぼした影響は大きく、今日の教育方法にも通じている「子どもは、自然のなかでおおいに遊び、育ち、子どもとしての時代を完成しなければならない」と説かれ、これが心と体を鍛えるベターな方法ではないかと話されました。
  現在の子どもが置かれている利便性重視の社会で自然環境が整っているのかを大人に問われるなど、考えさせられました。

 「いま、コミュニケーションの欠如に依り、親と子の関わりが危うくなっていないか」と氏は問われました。それには母性が必要と話され、「子どもは親の体験から自らの行動思考を養っていく」のだと氏は説かれました。子どもが生きる源である子育ての基本を再認識させられた思いでした。
  それに、氏の心地よく響く読み聞かせを耳にして、絵本の楽しさを共有することが親子のコミュニケーションを成立させることを改めて振り返るよい機会となりました。若い受講生の皆さんには、未来への深い思いがこの講座で確認されていくことと思います。

 飫肥氏は最後に自ら考える理(ことわり)を披露して『ガンピーさんのふなあそび』(ジョン・バーニンガム/作、みつよしなつや/訳、ほるぷ出版)を読んでくださいました。氏の選ばれたこの本は「絵本を読むということ」の 3つの特質を秘めているといわれるのです。

 この講座のどこをとっても、子どもに大人がどう向き合い何をするべきかを問いかけてくる。演題に即応された 4冊の絵本を挿んで、読み聞かせ解釈してくださった飫肥氏の温厚なお人柄の静かで熱い思いが伝わり、考えさせられることばかりでした。これって本当にいいことですね。張りつめた気持ちで聞いていたという受講生は「いいお話だった」「充実したね」と伝えてくれました。真剣な受講生を知る嬉しい証でした。

 午後の講演は絵本作家のとよたかずひこ氏の「でんしゃにのってももんちゃんがやってくる−自作を語る−」でした。

 最初に代表作といわれる紙芝居『ゴロゴロゴロン』(童心社)から始まりました。リズム感のある言葉の上にやさしく語る氏の雰囲気に会場は温かい空気に包まれました。
  そして持って来られた 6冊の絵本と3点の紙芝居の読み聞かせを通して、自作の紹介、観察をじっくりしておいて一気に描き上げるとの作り方など話していただきました。
  氏の歯切れのよいユーモアのセンスで始終受講生から笑みがこぼれ、ご自身の観察体験では余りの面白い話ぶりに爆笑を誘ったほどでした。

 制作対象は幼児であるが、中学生に読むと社会勉強になる発見を得られるとのことでした。それならば高齢者にでも読み聞かせを拡げてみようか…と意欲的でした。また、自作は表紙から裏表紙までの全てに内容を描いているので、大切に最後まで見てほしいと結ばれました。

 子どもに読まれる本だからこそ、氏は視野を広く観察して作ることが大事だと強調されました。
  何冊もの絵本を作者が読んでくださり、その意図するところを受講生は深く学ばれたことでしょう。前進あるのみですね。

 藤井専任講師に依るオリエンテーションでは、リポートの進め方などを一通り連絡された後、目をひいたのが受講生からの意見でした。

 本講座の受講料に対する意見に氏は、類似する他の講座を例に挙げ価格を比較され本講座の本質を見失うことのないようしっかり学んでほしいと意義を伝えました。

 グループワークでは『いない いない ばあ』(松谷みよ子/作、瀬川康男/絵、童心社)の読み聞かせを行いました。
  親と子が読んで、見えて、聞こえて、心におちるとの藤井氏の話もあり、読み伝える学びの実践の学習でした。「緊張で胸がドキドキした」「読む心が伝わったか心配」などが受講生の声でした。
  この読み聞かせは、受講生全員の心が個々にきっと何かをしっかり掴めたことと思います。

 仲間と頭をつきあわせて楽しみ、ここでしか学ぶことのできない有意義な時間であるという受講生共通の思いが見受けられました。

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