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報告者
芦屋4期生
熊懐 賀代
開講式   〜 絵本について 〜
第1編
2008年4月19日(土) 芦屋ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・ほるぷ出版・理論社
特別協賛:ラボ教育センター

 葉桜となった枝々に雫の眩しい雨上がりの 4 月 19 日、第 5 期「絵本講師・養成講座」(芦屋会場)の開講式が行われました。
  抽選で受講の機会を得た 85 名の受講生と特別聴講生 11 名が緊張と期待を胸に芦屋ラポルテホール・特設会場に集いました。

 開講式では、主催者を代表してNPO法人「絵本で子育て」センターの森ゆり子理事長の挨拶。
  本講座は、芦屋会場で始まった第 1 期( 2004 年)より、全国各地から熱心な受講生が集まり、現在、修了生は約 500 名。
  各地で絵本講座・講演の講師として活発な活動をしていることなどが報告されました。
そして、「真剣に学ぼうとする姿勢は人をこんなにも美しくするものだとつくづく思いました」、と激励されました。
氏の優しく心のこもった言葉にそれまで場内の緊張感の上に、ざわざわと漂っていた未知の世界への不安が、「これから学ぶことのできる嬉しさの波」へとふあ〜っと色を変えていくようでした。

 第 1 期生で「絵本講師の会」(はばたきの会)副会長の井下陽子氏は、祝辞の中で、こうして開講式に参加できる幸運を自分の力とするために、より積極的に学んでいきましょう、とユーモアを交えて受講生を迎えてくださいました。
  ラボ教育センター・関西総局長の上島康昌氏からは「絵本・物語を通して子どもの『こころ』と『ことば』を豊かにする。外国語学習も同じです」と祝辞をいただきました。今年もラボテュ―タの方が全国 3 会場で受講されているとのことでした。

 岩崎書店・営業部総括の籠宮敏治氏は、早朝、埼玉より始発の新幹線で駆けつけてくださり、「今は携帯読書の時代と言われている。それは児童書でも、どんな分野でも同じと言われているが、絵本だけは特別のものである。お父さん、お母さんの膝の上で読んでもらった感動は永遠のもの」と熱い思いを寄せられました。

  また、本講座の第 1 期から連続して開講式にご臨席いただいている、こぐま社・専務取締役の吉井康文氏は、「今年は初めて男性の方が一人もおられないのがちょっと残念」と切り出された後、昨年の新刊絵本は約 2170 冊、児童書を合わせると約 4900 冊。その中で子どもたちが出合えるのは極めて少ない。皆さんの力で多くの絵本を子どもたちに出合わせて欲しい。そのためにも皆さんの活躍を期待します、と激励の言葉をいただきました。

 最後は、作家で大阪国際児童文学館名誉館長の中川正文氏。冒頭、<幼稚園でハーモニカがうまく吹けない子どもが、故意に音を出なくした楽器を持たされて行事に参加させられた>、という話を投げかけられ、幼児教育現場の現状や問題について「何が本当に子どものためのものなのか」との重い言葉が私たちの胸に響きました。

 また、今の時代は 90 %の人が病院で死を迎え、家族で最期の時間をもつということがなくなっている。子どもにとって人間の死とはどんなものか、分らなくなってしまった。 ゲームや俗悪なテレビ番組の中では、人はいとも簡単に傷つけられ殺されている。子どもたちは、人の命の尊さを知らされていない、という現実を私たちは直視しなければいけない。その上で「私はここで何を得ようとしているのか」と受講を通して、私たちの生き方全般に対しての大きな課題を託されました。

 現代は絵本氾濫の時代だが、「言葉の品格をたいせつにしてほしい。自分の思いをいちばん美しい、いちばんステキな言葉で語りたい。私たちはその最後の砦になりたい」とおっしゃられ、自作の『ごろはちだいみょうじん』(福音館書店)を読んでくださいました。

 開講式の終了後、受講生は 10 グループに分かれ、特別聴講生も加わりテーブルを囲みました。春の風情いっぱいのお弁当を遣う中で緊張感も少しずつほぐれ、自己紹介ではお一人お一人の受講への熱心で真剣な思いが交わされていました。

 午後は「絵本・わたしの旅立ち」と題して中川正文先生の記念講演がありました。最初に「子どもたちの『こころの食べ物』である絵本や児童文学などについて研究をしてきました」と切り出され、子どもの心の食べ物である絵本を届けるとき、大人と子どもは同じ平面に立ち、一冊の絵本を仲立ちにして経験を同じくする。そして共に成長することがたいせつである。また、「子どもは発達心理学の本の中にいるのではない。あなたの目の前にいる」「テレビは一回見れば理解できるもの。絵本は繰り返し読んで想像力によってイメージを描いていくもの」「妊娠したら絵本を読もう」の運動をしている、とお話は尽きず、米寿を迎えられた先生のユーモアと限りない優しさ、更に、人間の在り方を厳しく問われるお話の中で受講生の心は一つになっていました。
最後に『すみれ島』を読んでくださいました。今期受講生も回を重ねた者も、涙があふれて止まりませんでした。

今日、こうして会場へ足を運び、私たちのために語り続けてくださったお声もお姿もそのすべてが、あなた方は命を与えられ、今生きているのです。あなたたち自身の目で見なさい。身体で感じなさい。そしてそれらを血や肉として成長し続けて、そしてあなたの言葉で語りなさい。伝えるべきものを自分の中にもちなさい。というメッセージであったと思います。 ここにあらためて、中川正文先生への心からの敬愛の気持ちと感謝の言葉を述べさせていただきます。

 講演の熱気の冷めぬまま、再びグループに分かれ藤井専任講師によるオリエンテーションがありました。課題リポートの取り組み方や受講の心構えなどが示され、受講生の引き締まった表情の中に 1 年間の学習への決意がうかがわれました。

 充実した時間はあっという間にすぎ、「もっと聴きたい」「もっと話したい」という思いが沸いてくる中での閉会でした。まずは初めての課題リポートにチャレンジ。 2 ケ月後の仲間との、そして来年 2 月の閉講式での中川先生との再会を心から願って第 1 編が終了しました。   (くまだき・かよ)

★芦屋会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★福岡会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★東京会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編

第3期リポート はこちらから ★ 第4期リポート はこちらから ★ 第5期リポート
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 ★ 第9期リポート はこちらから ★ 第10期リポート はこちらから

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