前日からの強風と冷たい雨で凍えるほどの寒い朝でしたが、飯田橋レインボービルの会場には、早くから集まった受講生たちの熱気があふれていました。
第5期「絵本講師・養成講座」第5編の始まりです。午前の部は当「絵本で子育て」センター森ゆり子理事長による講演です。
受講生を保育所の保護者と想定して、絵本講座の実演をしてくださいました。
はじめに、ご自身の緊張を解くこともかねて、『ちびゴリラのちびちび』(作 : ルース・ボーンスタイン 訳:いわたみみ ほるぷ出版)の読み聞かせです。
「だーいすきでした」と読む声には、「子育てで大変なお母さんたちにこそ、絵本の心地よさを知ってもらって、ほっと一息ついて欲しい」という温かいメッセージが込められていました。
受講生たちはうっとりした様子で聴き入っていましたが、「ちびちびは何歳でしたか?ちゃんと絵に描いてあるんですよ」との指摘に、絵を読むことの難しさを痛感しているようでした。
また、松居直・友父子の著書や、電子メディアの弊害を説く書籍・新聞記事を引用し、現代の子育て環境についての再考を促していました。
親子が同じ時間を過ごし、しっかり向き合うことで「生きていく力」(知識を活用する力)が育まれること。人との出会い・遊び・けんかなど実体験にこしたことはないが、その環境のない今こそ、絵本が伝えてくれることや、絵本を通じての感情体験の比重が大きくなっている、と結ばれました。
「絵本は読んでもらうもの・読んであげるもの」「良質の絵本から美しい言葉を、我が家の言葉として伝えましょう」「まるごと受け入れられていると五感で実感できる」「心の基礎体力を」など、数々の名言が心に残りました。
それらが素直に心に響いたのは、森理事長の口調や雰囲気に包まれ、自分自身が受け止められているような感じがしたからでしょうか。
そして、参加者に寄り添う姿勢こそが、私たち絵本講師に求められるものなのだと改めて胸に刻みました。
昼食をはさみ、午後の部は藤井勇市代表の講評からです。まず、会場に一歩でも足を踏み入れたら受講生としてのふるまいが必要で、それは学ぶことの根幹に関わるとのお話があり、一同が襟を正しました。
さらに、家族が「家族」することの大切さとして、自我を抑え家族の一員としての役割を果たすことが、社会の中でのふるまい方の下地になっていること。思い通りにならないこともあることを家庭の中で示す必要があることをお話くださいました。
次はグループワークです。絵本講座実演の感想や修了リポートについて話し合いましたが、回を重ねるごとに各グループがまとまっていくのがよくわかります。互いを気遣い良さを認め合う受講生たちの間に、絵本で繋がる絆を感じます。伝えたいことを伝えるための資料をどう集めるか、視覚に訴えると効果的だ、などと絵本講座に活かしたい意見がいっぱいです。
森理事長や聴講生に質問する姿もあちこちで見受けられ、リポート作成や修了後の活動への熱意が伝わってきました。
お開きのころには、雨が上がっていました。少し日の長くなった夕空に、春がもう近くまで来ているのを感じながら帰途に着きました。次回修了なさる受講生たちが、絵本講師となってはばたく日ももうすぐですね。(おかべ・まさこ) |