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報告者
東京5期生
大久保 広子
第3編   〜 絵本講座について 〜
2009年9月26日(土) 家の光会館
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・ほるぷ出版・理論社
特別協賛:ラボ教育センター

 9月26日、初秋を感じさせる爽やかな風の中、ホームグラウンドともいえる会場「レインボービル」がリニューアル工事のため、ひとつお隣のビル「家の光会館」にて、第6期「絵本講師・養成講座」東京会場・第3編が開催されました。

 午前のカリキュラムは、数多くの海外絵本の翻訳を手がけ、また、劇団天童を主宰されミュージカルや語り芝居をプロとして活動されている浜島代志子先生の講演「読み語りの楽しさ(実演)」。

 先生は演台に立つなり「みなさん、良い顔してますねぇ〜!今年の方はすごく希望を持っていらっしゃるのが感じられます!」と、ハリのある声で一言。この言葉に、受講生の緊張感が一気にほぐれ、この「夢・希望・感動」を持つことがどんなに大切なことであるか…絵本を通じて、それをどう伝えなくてはならないのか?というお話に惹き込まれてゆきました。

 新刊があふれるように出版され、内容は良くてもなかなか手にとられず“売れない”“古い”というくくりで、良い絵本がどんどん裁断破棄され失われてゆく現状。文化を伝え支えることの難しさを感じているからこそ、「本は置いておいたらただの干物、干しシイタケよ。でもね、それを戻して、お砂糖や調味料で煮込んで!料理して!!ほっとかないで!!そんな風に良い本を選んで渡しましょう!そして、心情と人格を育てる日本民話や古典の素晴らしさも伝えましょう!」と訴える先生の言葉に、また、先生がキーワードにされた“真・善・美”の観点に、絵本講師として、どのような絵本を手にすべきか、というヒントが得られたのではないでしょうか。

 子どもの「参加したい気持ち」を引き込み、会話をしながら心が一方通行にならない『タニファ』『はらっぱにライオンがいるよ!』。じつは深いメッセージ性が込められている『3びきのくま』。そして、全身で歌を取り入れながら、時にはおごそかに、場面によってメリハリをつけた『マウイたいようをつかまえる』それぞれの実演に受講生はそれぞれの思いを抱いていたようでした。(そう、それぞれ…それが良いのです!)

 午後のカリキュラムは、30年以上臨床経験を通じて、「子育て環境」を見つめ続けて来られた川崎医科大学名誉教授であり、 Kids 子育て研究所所長を務めておられる片岡直樹先生の講演「テレビ・ビデオが子どもの心を破壊している」。

 「アメリカでは10人に1人、日本では5人に1人が、健康に生まれてきたにも関わらず、友達とうまく関われない事例が増えてきていると言われている」その原因は何故か?どこにつまづきがあるのか? 

 実際に先生のところに相談に来られた家庭の育児の様子を収めた映像を見せていただきながら、その問題点を解説していただきました。中でも、「子どもの目も見ずにテレビを見ながらミルクをあげる父親と、ミルクを飲みながら父親とはまた別のテレビを見ている子ども」の映像に受講生からは驚きの「えぇー?」という声が。言葉を発せず、視線も合わせなくなったにも関わらず「言葉がでませーん」と無邪気にビデオをまわす母親の声に「んんー?」そして、片岡先生の指導で、音と光をやめ絵本を読むなど積極的に子どもに関わるようになったところ、成長するにつれ言葉や表情が戻り、4歳で言葉が取り戻せた場面では「おぉ〜」と安堵の声が会場中を包みました。片岡先生は幼少時から、竹からヒゴを削り出して凧を作ったり、蚕を育て繭から糸をとりその糸で釣りをしたり、山に親しみ海で遊び…自然の素晴らしさ、自分で作り出す楽しさを存分に味わって成長されたそうです。「経験して育つことがどれだけ楽しく、生きる力を育むのか」を知っている先生のお話から、「子どもを取り巻く日常や環境が親も含めて、機械で、機械的であってはならないのだ」ということをあらためて心に深く刻みました。

 また、この7月に出版された先生の本『テレビを消したら赤ちゃんがしゃべった!笑った!』にも様々な例が紹介されていますが、絵本講師の働きかけで、ほんのちょっとした「大人の思い違い」を取り除いてあげることが出来るのだと思うと、わくわくしてきませんか? 子どもにかかわるすべての方に伝えなくてはならない「怖さ」があることも胸に響く学びとなったと思います。

 続いて、藤井専任講師から講座についての補足がありましたが、この時間が実はリポート作成への気づきや講座の意味を問う深い深い時間―。(個人的には、もっとお話を聞いていたいといつも思うのですが…)今回も、「「楽しむ」ということと「教える」ということは別のこと。絵本講師の活動の基本は、子どもたちがおかれている教育の場から心を解放し、そしてまた絵本体験を胸に、教育(生活や学びの)の場に戻っていけるようにするということで良いのではないか?」というアドバイスに深く頷くばかりでした。

 グループワークでは本日の講座について、「個人的」な感想だけではなく、これからどうしたらよいのか、そのように活動をすべきかといった「絵本講師」としての意見も積極的に交わされ、存在価値について考えあう様子に、3編にして質の高い学びが進められていることに驚かされました。共感し合い、頷き合い、顔を寄せ合うその姿に、はやくもグループの輪が和になったことを嬉しく感じた一日となりました。(おおくぼ・ひろこ)

★芦屋会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★東京会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編

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