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報告者
芦屋8期生
福田 人規
第2編   〜 読み聞かせについて 〜
2013年6月22日(土) ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 ここ数日降り続いた雨は上がり、久しぶりに心地よい風がそよぐ朝でした。6月22日土曜日、受講生の皆さんは生き生きとした表情で会場に入って来られました。
第10期「絵本講師・養成講座」第2編の始まりです。
 第2編の午前は、当養成講座としては初めてお迎えするむの たけじ氏の記念講演です。司会を務める加藤美帆さん(芦屋3期生)が、むの氏の経歴やご著書などを紹介される間、既にむの氏は壇上におられました。私たちはどんなお話をしていただけるのだろう、と期待に胸ふくらませながら待っていました。

 「あと、1年半で100歳になります!」、とむの氏が開口一番話されました。その言葉に会場のあちらこちらから驚きの声が洩れていました。その発声は、とても98歳には思えない力強いものでした。
「子どもと絵本のことは専門外ですが……」とおっしゃいましたが、そのお話は深く、歩まれてきた人生経験をもとに、感じられ、考えられたことを丁寧に話してくださいました。
 話のポイントとして3つ挙げられました。
@幼子の時期とは?A絵本とは?B世界にとりまく問題について
まず、幼子の時期(乳幼児期)は当に人生の根幹であり、決して疎(おろそ)かにできないということ。
それは命の土台が出来る時期であり、その後も長く人生に影響を与えていくものだからです。人として生き抜くためには自分の責任で判断していかなくてはなりません。
ですから、親子が共に育ちあうこの時期に絵本の果たす役割は大きく、絵(本)を介して行うコミュニケーションは意味のあるものになります。
 また、私たちは今生きているこの世界が永遠であるかのように思っていますが、存続させるも滅亡させるも、今まで歴史を作り上げてきた一人一人の自覚に関わってくると話されます。
かけがえのない一人一人が自分の場所から自分の出来うる責任で生きていくことが第一歩であり、自分を労り、喜ばせ、決して粗末にしない、自分を大切にすることが人を大切にすることに繋がっていくとも話されました。

――「対立」ではなく「一対」になって――
 戦争の終わりの頃に、お子様の「ゆかりちゃん」をエキリで亡くされたお話は、私たちの心をも締めつけました。戦争で殺されるなら戦争を殺すために生き続けたい――と話されたむの氏は、親としての思いを胸に、対立ではなく「命を守り、つないでゆく世に」と話を続けられました。
この言葉がたくさんの人の心に響くことを願います。
 最後に、人が支えあって生きる基盤を作る場面に立ち会う私たちに、「誇りを持って頑張ってほしい」と激励で締めくくられました。むの氏の言葉には子どもたちの生き抜く力を信頼する思いが溢れていました。

 講演が終わり、通常は講演をしていただいた先生への質問時間は設けないのですが、むの氏自ら「どんどん質問をしてくださいよ!」と言われ、その姿からも対話を大切にし、人を大切にし、共によりよい「今」を生きていこうというメッセージのようなものも感じました。

 昼食の後、午後からは藤井代表のお話がありました。むの氏について経歴など敬意をこめてお話をしてくださいました。
 その後、絵本の読み聞かせの種類についてお話されました。読み聞かせには――・特定多数・不特定多数・不特定少数・特定少数――を対象にするものがあり、それぞれの場面で読み聞かせの方法も注意事項も、少しずつ変わってくるということです。
 前者の3つは学校・保育園・幼稚園・図書館などで行われる読み聞かせに該当します。家庭での読み聞かせは特定少数となります。
そういった想定も考慮にいれて、グループワークでは、<松谷みよ子あかちゃんの本『いない いない ばあ』(瀬川康男/え、童心社)>を、受講生の皆さんには読み聞かせしていただきました。どのグループも和やかに読み聞かせを楽しみながら意見交換をし、また、むの氏の講演の感想トークで盛り上がりながら、提出課題の大変さを共有しながら、充実した時間を過ごされていました。

 次回は2カ月後、暑さ真っ盛りの夏に第3編が開催されます。お身体ご自愛の上、元気一杯で参加していただきたいと思います。
(ふくだ・ひとみ)

第10期「絵本講師・養成講座」
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