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報告者
東京9期生
多々良 尚美
第5編   〜 絵本講座の組み立て方 〜
2014年01月25日(土) 飯田橋レインボービル
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 第10期「絵本講師・養成講座」(東京会場)の第5編は1月25日、ふだんより少し暖かい日差しの下、飯田橋レインボービルで開催されました。

午前の部は「絵本で子育て」という演題で森ゆり子(NPO法人「絵本で子育て」センター理事長)の絵本講座の実演。聞く側(受講生)は保育所の保護者になっていただき(つもり)講座がスタートしました。

まず世界中の子どもたちに圧倒的に愛され読まれている絵本『ちびゴリラのちびちび』(ほるぷ出版)の読み聞かせです。《だいすきだよ》《だいすきだよ》のことばのシャワーに、いつしか心が解放され気持ちがリラックスしていくのを感じます。「大人は文字の方にも目がいきますが、子どもは絵をしっかり見ながら文字の言葉を耳から聴くので、大人の何倍も絵本の世界を広げていきます。絵のことばと文のことばが調和していきます。だからこそ絵本はよんであげるものなのです」……淡々とした語り口のなかに森理事長の絵本を愛するハートがじんわりと伝わってきます。

『いない いない ばあ』(童心社)では、<いない いない=闇><ばあ=光>という別離と再会の経験、不安と安心、恐れと平穏など、「人の感情は対になって育っていく。それが自己肯定感や他人に対する信頼感、ひいては世界観も育てていくのです」と話されました。
実際、自己肯定感を持ちにくい日本の子どもたちの現状。こころがアンバランスになっていることを救うためには何が必要か。『いいこってどんなこ』(冨山房)を読みながら、「子どもを丸ごと受け入れる」ことの大切さを説明されました。
また、いじめを受けていた少女が小さいときからずっと読んでもらっていた『はなをくんくん』(福音館書店)の絵本に、もう一度生きる力をもらったことや、罪を犯し、心を閉ざしていた男の子が『わたしたちのトビアス』(偕成社)の絵本にはじめて感情を表していったエピソードが語られていきます。

松居友氏の著書『わたしの絵本体験』(大和書房)から、「――絵本は心のアルバム。語ってくれた人のあたたかい心が思い出されて勇気づけられる――」を紹介されました。
今、三つの間(時間、空間、仲間)が無くなっている社会で絵本が伝えてくれることがとても重要になっています。また、メディアの弊害も深刻です。スマホに子守りをさせたりテレビをつけっぱなしにしたりせず、静かな空間を作ってほしいものです。
最後に読まれた『さっちゃんのまほうのて』(偕成社)は、受講生全員が目を瞑り、耳を傾けました。時折、涙を拭うしぐさも見られ、他人の痛みに寄り添い共感するこころが伝わってきました。
《あなたのことをしっかり思っているのよ!!》……絵本にはたくさんの愛が込められていることを再発見する時間となりました。


午後の部は、片岡直樹先生(川崎医科大学名誉教授、Kids21子育て研究所所長)の「テレビ・ビデオが子どもの心を破壊している」です。
先生は30年以上の臨床経験を通して「子育て環境の悪化」を痛感され、家庭環境を立て直そうと全国的に活動されています。5000人以上の子どもたちの発育段階の指導(育て直し)に関わり、実際の子どもたちの生い立ちの様子や、治療していくなかで子どもたちが変化していく様子と先進国の子育ての危険な現状を話してくださいました。

テレビ、ビデオ、パソコン、スマホなどに囲まれた生活のなかで、「表情が無い」「泣かない」「笑わない」「目線が合わない」、赤ちゃんの存在。テレビなどの電子機器が子どもの育ちに計り知れない影響を与えている実状を知る機会と成りました。
先生は、乳幼児の生育環境を整える必要性を説かれ、特に生後1〜2年は必ず身近な大人が傍にいて「応答的関係」を保つことがないと、人間の魂は育たないと話されました。IT社会が発達していくほどに、子どもの精神活動が低下していく現状に子育て環境をもう一度考え直す必要があることを実感しました。
――・テレビのつけっぱなしをやめる ・静かな空間をつくる ・アナログの生活に少しだけ戻してみる ・一緒に絵本を読む ・五感をつかった体験――。まず、出来ることから一つずつ取り入れていくことが大切です。

講演の後、藤井勇市専任講師からお話しがありました。
「絵本を通して家庭に言葉を紡ぎ出していくことが大事。読み聞かせは、上手、下手でなく読み手の全人格が立ち現れるもの。何回も何回も読んでいくなかで、等身大の自己が現れます。
本講座は、絵の見せ方や声の出し方といった技術を学ぶところではありません」、と。
この講座の趣旨の深さが伝わってきました。

 最後にグループワークが行なわれました。最終リポートに向けて、書き方などに対する疑問、意見が活発に交わされ、今までの学びを集大成する意気込みが感じられました。本日の講演のあたたかい余韻に包まれる中、好きな絵本を紹介しあうグループなど時間いっぱいまで語り合い終了しました。次回は修了式です。第10期の受講生の皆さんともう一度学ぶ機会をいただきました。たくさんのことをこころに留めておきたいと思います……感謝!(たたら・なおみ)

★芦屋会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★東京会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編

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