絵本講師養成講座

報告者
報告者 後藤 純子(芦屋4期)
芦屋4期
後藤 純子
第3編 ~ 絵本講座について ~
2015年08月22日(土)芦屋 ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

絵本が伝えてくれるもの

 第12期「絵本講師・養成講座」芦屋会場第3編が2015年8月22日、ラポルテホールにて開催されました。

  午前は、飫肥糺氏の講演です。演題は「いまの世で、絵本からまなべること」でした。「今の世の中がおかし講演 飫肥糺氏いことを口にしなければいけない」、「若者が動き始めている」ということからお話が始まりました。
 民主主義の日本で今の政治を作ったのは、投票したわれわれ自身なのであるから、政権に知性がないと非難するのであれば、自分自身の知性を疑わなければならない。「積極的平和主義」という矛盾した言葉が使われている今、私たちはきちんと本を読む力、ことばを使う力をつけなければならない。
  そこで、『せんそうしない』(谷川俊太郎/文、江頭路子/絵、講談社)を紹介されました。くり返し文を読む中で素直な言葉の力を感じる絵本です。「こどもとこどもはけんかしない」のに「大人と大人が戦争をするのはなぜなのか」を絵本から考えなければならないのです。

講演 飫肥糺氏2

 もう1冊紹介されたのは『おもいだしてください、あのこどもたちを』(チャナ・バイヤーズ・アベルス/構成・文、飫肥糺/訳、汐文社)です。
 戦争を考えるとき、日本の敗戦や被害だけを知るのではなく、日本が何をしたのか、イタリアやドイツ、アメリカや他の国々が何をしてきたかも知らなければならないのです。その上でお互いに理解することが必要なのではないでしょうか。

 

講演 とよたかずひこ氏
 午後はとよたかずひこ氏「でんしゃにのってももんちゃんがやってくる―自作を語る―」の講演でした。
 紙芝居『はい、タッチ』(童心社)などを演じられた後に、絵本『でんしゃにのって』(アリス館)を読み聞かせてくださいました。この作品は、とよた氏がおばあさまから聞いていた話をもとに作っていた「ダミー」を編集者が見つけて絵本になり、読み聞かせをした時の子どもたちの反応がよくて、今も出版され続けているそうです。
 この作品までは、わが子の子育てを通して絵本の創作を考えてらしたのが、この作品からは、多くの人に訴える力を持つ絵本を考えるようになったとおっしゃっていました。

講演 とよたかずひこ氏2そして、『どんどこももんちゃん』(童心社)の登場です。「ももんちゃん」シリーズでは最新刊の『ももんちゃんぴょーん』(童心社)表紙の印刷前の原稿を見せていただきました。

 ももんちゃんの暖かいピンク色や金魚の柔らかい朱色は原色から指定して丁寧に出来上がったものなのです。とよた氏の子どもらしい暖かい世界、安心できる世界を子どもたちとその周りの大人に伝えていきたいと思います。

 

 グループワークの前に、藤井専任講師が「学びとは、何かを吸収することではなく、自分の頭の中に疑問を作講義 藤井勇市専任講師ることである」とお話しされました。そして、今の社会で子どもたちに絵本を届けることの必要性を自分の言葉で伝えるということが課題であると明確に示されました。この後のグループワークは活発な話し合いとなりました。
グループワーク 1

 今年は戦後70年で出版などの情報発信も多い一方、安全保障関連法案の衆議院強行採決など、戦争や平和について考えなければならないことが増えました。

 おりしも少年少女がかかわる事件が起きていたこともあり、各グループでは、社会の現状も話題になり、社会の問題に絵本講師としてどうかかわっていけばよいのかをもっと知りたい、子どもと絵本だけでなく親を支えることが絵本講師として求められているといった内容が話し合われました。


 講座が終わって外に出ると青い空の色が少し深くなり、秋の気配を感じました。いつかこの夏が歴史の変り目だったと思うことのないよう、日々を過ごしていきたいと思いました。(ごとう・じゅんこ)

 

グループワーク風景

グループワーク風景

第12期「絵本講師・養成講座」
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