絵本講師養成講座

報告者
田中 潤
東京7期
田中 潤
第5編 ~ 絵本講座をやってみよう ~
2016年01月23日(土)飯田橋レインボーホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

第12期「絵本講師・養成講座」東京会場第5編が2016年1月23日(土)、飯田橋レインボーホールにて開催さ司会 勝村美幸氏れました。本日の司会は勝村美幸さんです。

 午前の部は、元大阪国際児童文学館名誉館長の故・中川正文先生のDVD講義。東京7期「絵本講師・養成講座」第1編での記念講演の視聴でした。演題は「絵本・私の旅立ち」です。

 最初に先生は、ご自身の数々の病歴や現在も患っていらっしゃることをお話されましたが、辛口でありながら優しさやユーモアを含んだ先生のお話しぶりに会場では笑い声も上がり、先生の言葉を一言も聞き漏らすまいと、受講生の気持ちも一気に集中したように感じられました。

中川正文先生のDVD講義 人間が人間に大事な文化を、子どもにとっての大事な食べ物である絵本を手渡すのに「与える」「下ろす」などという考えはやめたほうがいい。同じ平面(平座)で一冊の絵本を仲立ちにして、経験を分かち合い共に成長を共有するのが、大人と子どもと絵本との基礎的な基本的な関係である、と体験談を交えながらお話されました。

 子どもを「育てる」なんて思い上がりを捨てて欲しい。そこから出発してほしい。親は子どもと一緒に成長するチャンスが与えられたのだ、とそう思ってほしいという言葉に私は親となった人たちへの、先生のあたたかな眼差しを感じました。また「ぼくはね、子どもの絵本には、一番素敵な絵を用意したいんだよ」、と言いながら絵本を紹介される先生からは、子どもたちへの深い思いが滲み出ていて、その優しい声と表情が深く心に残りました。

 最後に先生は、『すみれ島』(今西祐行/文、松永禎郎/絵、偕成社)を朗読されました。読み終えたとき先生は「これだけです」、とぽつりとおっしゃいました。そのわずか数分の語りが、たった1冊の絵本が持つ力の大きさを、これ以上ないほどに心に残るような形で教えてくれました。子どもたちに何を伝えるか、命や平和の大切さを伝えるのにどうしたよいか。この絵本を声に出して読むだけでも意味があるのではないか。「だから私は、やっぱり今日もりんごの木を植える」。そう、先生は私たちに伝えてくださいました。

講演する藤井勇市専任講師 午後の部は、「絵本講師・養成講座」専任講師の藤井勇市先生のご講演です。はじめに、私たち大人は、社会が抱えている様々な問題について知った上で子どもたちに絵本を届けなければならない、知識を持ち、考え、時代の危うさを感じ取る感性を持たねばならない、と絵本講師として、一人の人間として、このざわついた空気に包まれた時代をいかに生きるかについてお話されました。

多様な意見はあっていいが、反対するも賛成するも、なぜそう思うのかを明確にできるよう、見かけの情報に惑わされぬよう個人がしっかりとしたリテラシーを持つことが大切だと、詳細な事例を用いながら説明してくださいました。

「中川正文先生の思い出」では、家庭から言葉が消えたと言われる今、それを絵本の力で取り戻せないかという「絵本講師・養成講座」が目指すものに中川先生は共感してくださり、「本邦初の試みだね」、と言って設立以来ずっと力を貸してくださったこと。中川先生は生きることの大切さ、命の大切さをずっと伝え続けておられたことなどを、『絵本・わたしの旅立ち』(NPO法人「絵本で子育て」センター刊)を引用して話してくださいました。

また、大人がいない、自分がいない、想像(創造)力がない、三つの「ない社会」において、たとえ今自分ができていないことがあったとしても、問題を認識していること「こうしたほうがいいな」、と思えることが大事なのだとおっしゃられました。そして、教育は親から子への贈り物である、効果を求めるものではないのだ、と親本位で行われる早期教育の危険性についても触れられました。

最後に、長田弘さんの『読書からはじまる』(NHK出版)を紹介してくださいました。子どもの本になくてはならないもの、書かれていないものへの想像力など、子どもと絵本に関わる絵本講師としてしっかりと理解し、何が大切かを自分の言葉として語れるよう、またここから学んでいきたいと思いました。

 グループワークでは、最終リポート作成を前にして、どのような構成にするのかなどお互い発表しあったり、質グループワーク風景

問しあったりしていました。皆それぞれに話したいこと、伝えたい対象があり、内容も絵本も様々だけれど、子どもへの思い、そして親への思い、絵本で子育てへの思いがしっかりと伝わってきました。どのような講座になるのかとても楽しみです。リポート作成は大変だと思いますが、これまで養成講座を通して学んだことを振り返りながら、ぜひやり遂げてください。そして次回はいよいよ閉講式。溢れる笑顔の皆さんと会場でお会いできるのを、楽しみにしています。 
(たなか・じゅん)

 


講演風景
講演風景

第12期「絵本講師・養成講座」
★芦屋会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★東京会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編