私の絵本体験記

「絵本フォーラム」105号(2016年03.10)より

絵本が与えてくれた幸せ

富田 裕子(福井県敦賀市)

絵本が与えてくれた幸せ 子育ても終盤に差し掛かった私ですが、子ども達と紡いだ日々の楽しい思い出が、絵本と共にあることを、とても幸せに思っています。絵本を開けば、子ども達の笑顔が、声があふれ出て、いつでもあの幸せな時間を感じることができるのですから……。

  私は、三人の子に恵まれ「絵本で子育て」を楽しんできました。そして、夢だった学校図書館で勤務する機会を得、多くの子ども達とも沢山の絵本を楽しんできました。

  絵本を読み聞かせすると、身を乗り出し聞き入ってくれた子ども達。読み聞かせした絵本を、卒業時に思い出の一冊として挙げてくれた男子中学生。「先生のような仕事がしたい」と瞳を輝かせて夢を語ってくれた絵本好きの女子中学生……。
絵本が、多くの子ども達との心を繋いでくれました。そして、子育ての最中に、ふと立ち止まってしまった私を、支え勇気づけてくれたのもまた、我が子と楽しんだ素敵な絵本たちでした。

  『ベンのトランペット』(R.イザドラ作/絵、谷川俊太郎/訳、あかね書房)のトランぺッターのように、いかした大人でありたい。そう願いながら、子ども達と向き合ってきた私です。絵本から受けた恩恵を考えるとき、私が幼なかった頃繰り返し絵本を読んでくれた両親と、絵本の魅力を深く教えてくださった師との出会いに、感謝せずにはいられません。

  絵本と共に育った長女が、夢をかなえ、社会人となるこの春。門出を祝う絵本を選ぶのもまた大きな楽しみです。
(とみた・ひろこ)


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