一人息子が幼稚園児の頃、「絵本フェスティバル」なるものに二人で出かけた時の思い出と、それにまつわる四方山話でご機嫌伺い。
絵本作家中川ひろたか氏の講演では親子でゲラゲラ大笑い。購入した絵本にサイン、握手、一緒に写真まで撮って頂き、作風同様その飄々としたお人柄にすっかり魅了された様子の息子。以来「好きな絵本作家ランキング」では中川氏が不動の一位を守り続けている。
即売コーナーでは広い会場に絵本の山。息子と二人で時間も忘れて読み耽り、あれもこれもと選んだことでレジに並ぶ頃にはかなりの量に。どっさり絵本が入った紙袋を提げる手が千切れんばかりに痛かったことは言うに及ばず、懐も泣きたくなるほどに痛かった。
その甲斐あって、これらの絵本はその後の息子のお気に入りとなり、ついには「幼稚園に持って行く」とまで言い出した。「このおもしろさを友達にも教えたい。皆に読んでくれるよう先生に頼む」と言うのである。息子よ、母は感動した! 果たして息子の望みは叶い、クラスは大いに盛り上がったそうである。
息子は現在高校生。彼の絵本たちは今、私が開く「国語教室」の生徒達を楽しませている。或る時小学2年生のA君が「授業の前にこれ読んで」、と以前に一度読み聞かせた本を持って来た。「新入りのB君にもこの本のおもしろさを教えたいから」と。…ん!? どこかで聞いたセリフである。ああ、そうなのだ。子どもは誰でも絵本で得た喜びを友と分かち合いたいものなのだ。A君よ、先生は感動した!
かくしてその日の授業の中で、彼らの顔に大輪の花が咲いたことは言うまでもない。
(たかだ・みさよ)
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