えほん育児日記

   
わたしの子育ては・・


~絵本フォーラム第107号(2016年07.10)より~  第1回

子どもは賢い1 私には娘が一人いる。中学2年生になった。親ばかだけれども、とっても良い子に育ってくれている(と思っている)。娘がきちんと育ってくれたのは、素晴らしい出会いがあったことと、周りの人たちに助けてもらったことと、娘が私に教えてくれたことがたくさんあったからだ。

  子どもが生まれる前は、だれでも育てているのだから自分も育てられるだろうと甘く考えていた。実際生まれてみると、なかなか寝てくれず1時間くらいで泣いて起きてしまう。私は寝不足で家事もろくにできず、イライラしながら子育てをする毎日だった。

  夫の転勤で子どもがおなかにいるときに栃木に引っ越した。実家からも遠かったので里帰り出産をしたにもかかわらず、実家にいる間も子育てがつらく必死な毎日だった。

  そして、生後48日で栃木に戻ることになったとき、本当にやっていけるのか不安しかなかった。里帰り出産したこともあり、引っ越し先の病院もわからず、友達も知り合いもいなかった。誰にも頼れず、話し相手もいないことも不安の一因だった。母乳にこだわっていたこともあり、子どもの体重が軽く心配だったため、子どもが生まれて病院から退院したあとに保健師さんが家に来てくださる制度を利用することにした。里帰り出産したこと、体重が軽いことを話したら来てくだることになった。その保健師さんとの出会いが、私にとって貴重で助けられた出会いだった。

 保健師さんは、私の様子をみて「保健センターで育児サロンをやっているから子どもをつれて来なさい。本当は、人が増えてあまり告知してないんだけどあなたは来たほうがいいから」と言われた。人見知りで、知らない集まりに行くことは苦手だったけれども、保健師さんがせっかくそう言って誘ってくれたので思い切って行くことにした。

 行ってみると、それぞれ友達同士で固まって話をしていて私はその輪にはなかなか入れなかった。でも、保健師さんが体重を測ってくれたり、子どもについて心配なことの相談にのったりしてくれるので、その後も参加し続けた。何かあるとすぐに保健師さんに相談できるという環境は、私にとって本当に心の支えであり、助けられた。ここで保健師さんに出会っていなければ、子どもを育てられなかったかもしれないと思う。子どもの虐待のニュースをきくと、私も一歩間違ったらそうなっていたかもしれないと恐ろしくなる。両親も何かあれば神奈川から駆けつけてくれた。周りの人に助けられたからこそ、私は今、無事に子どもを育ててこられたと実感する。 子どもは賢い2

  そして、8ヶ月検診のブックスタートで絵本をもらう。『いないいないばあ』と『じゃじゃあびりびり』のどちらかを選ばなければならない。実は、どちらもいやだったが『いないいないばあ』を選んだ。まさか、この絵本がそんなに良い絵本だとも思わず、8ヶ月でも絵本を読んだらわかるんだということに気づき絵本を読むことを始めた。でも、自分に自信がないので、絵本は何を読んだらよいのか? どうしたらよいのか? を調べ始め、1日10冊以上読んだほうが良いという情報を読めば、1日10冊を無理やり読むという風に、楽しむのではなく「読まなければならない」だった。

 ただ、私は一生懸命だった。子どもに良いことをしてあげたいだけだった。それが子どもにとって良いことかどうかを自分で判断できずに情報に振り回されていた。

 でも、娘は賢かった。私が良かれと思ってすることを、娘はきちんと「いやなものはいやだ」と反抗してくれた。意志を表明してくれた。無理やり1日10冊読むことなんて、何日も続けられない。そして、絵本を読んでいるうちに、子どもの様子をみているうちに、義務だったことが、楽しいことに変わっていった。

 こんな調子でダメな母親だけれど、娘が中学生になった今も、私がおかしなことをすれば娘がおかしいと教えてくれるし、周りの人たちに助けてもらいながら子育てと自分育てが続いている。
 (なかた・ともこ)

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