えほん育児日記

   
わたしの子育ては・・・


~絵本フォーラム第110号(2017年01.10)より~  第4回

 絵本の読み聞かせをしていれば、本が好きになると思っていた。でも、娘は小学生になっても絵本ばかり読み、絵のない本を読みたがらない。いつもお世話になっている方に相談すると、「生活体験が少ないのではないか?」 「言葉を聞いて、頭の中に絵が出てこない状態ではないか」、と言われた。
私の子育て4 写真1 まず、私が本をもっと読みこみ作者にも興味を持ち、その絵本を楽しむ。そして、感想を子どもに話してみる。自分の心の中を実況中継のように話してみる。また、子どもが学校から帰ってくるまでに絵本を何冊かテーブルの上に置いておく、というアドバイスをいただいた。
 そろそろ戦争についての絵本も読みたいと思っていたので、娘が帰ってくるまでに絵本を読み直し、机の上に戦争に関係する絵本を並べておいた。どの絵本も一度は読んだことがあるが興味を示さなかった絵本ばかりだ。

 娘は『チロヌップのきつね』(金の星社)の絵本をみて、「これどういうお話?」と聞いてきた。「このお話を書いた人は、実際に戦争に行ったときにキツネの白骨死体をみつけたんだ。そのことが心に残っていて、このお話を考えたんだって」と話すと、「読んで~」と言う。早速読んだ。読み終わると「キツネ死んじゃったの?」と聞いてくる。「どう思う?」と言いながら、もう一度絵本を一緒に眺めた。

  よくお手玉で遊んでいるので、『お手玉いくつ』(教育画劇)も読んでみる。そのお話に「空襲」という言葉がでてきた。「空襲って何?『えんぴつびな』(金の星社)にもでてきたよね」と言い出した。『えんぴつびな』は小さい頃から何度も読んでいる。娘は、絵本にでてくる「しんぺいちゃん」が好きで戦争の絵本とは認識していなかったようだ。おそらく今回つながったのだと思う。

  私なりに空襲について説明したが、「なんで空襲だと火事になるの?」とさらに質問された。うまく説明できないので、『はらっぱ』(童心社)を読むことにした。真剣に、絵を細かく見ていた。空襲の次の場面で、家も何もなくなった焼野原をみて、「うわ~。なにもなくなった!」という言葉がでてきた。

  読み終わると今度は突然、「『ひろしまのピか』(小峰書店)って何?」と言う。私自身の幼い頃の怖い記憶のため(絵を見るのも嫌なので)娘には一度も読んでいない。「この絵本は広島に原爆が落とされた話で、お母さんはこの絵本が怖くて今まで読めなかった」と正直に話すと、「読みたい」と言うので一緒に読んだ。何を感じたのかはわからないが「本当に7つのままなの?」と聞いてきた。

 その後、戦争の話を家でもするようになり、「なんで戦争するの?」「なんで爆弾がおちると火事になわが家の子育て4 写真2るの?」とたくさんの疑問がでてきた。

  私も戦争について勉強しようと、まだ読んでいない『ゆみ子とつばめのおはか』(偕成社)を読んで、机の上に置いておいた。娘は「戦争の本だね。読みたい」と言って一緒に読んだ。児童書なので、途中で止めてしまうのではと思っていたが最後まで読んだ。

  以前、栃木に住んでいた時、玄関の照明灯につばめが巣を作っていた。毎年楽しみにしていたが、ひなが落ちて死んでしまうことがあった。また、ふんの掃除も大変だった。そんな経験が、巣の下に机を置いて勉強するという場面で「うわ~、汚いね」という言葉になったのだろう。読み終わった後、娘がぽつりと「黒い雨にあたったのに死ななかった」と言った。私が話した黒い雨の話が、娘の心に残っていたのだ。

 知人のアドバイスの意味は、「一緒に体験すること、母親の気持ちを伝えることが子どもの心に興味を持たせるきっかけになる」ということだったのだ。何気なく話したことも、子どもの心には、きっとたくさん刻まれているのだろう。そして、体験してみなければ、自分事として想像することは難しいのだろう。戦争だけは体験したくない。絵本を読むことで、戦争について娘と一緒に感じ考えられたのは、貴重な時間となった。
(なかた・ともこ)

 

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