ジェリーの日本見聞録

 

『季節』

 アメリカにいる家族と話すと必ず聞かれる事があります。「天気はどう?季節は変わっている?」と。実家は農業もやっているので職業病に近いと思います。他の国の事でもやっぱり気になるみたいですが、農業に従事していない人はどうでしょうか? 私は日本の天気、特に四季はアメリカより大事な役割を果たしていると思います。

 日本は四季をとても大切にする文化だと思います。日本に来る前に本や映画で見た日本は季節に関する場面が多かったです。例えば桜吹雪とか京都の真っ赤な紅葉など。初めて教えてもらった四字熟語は「春夏秋冬」でした。なぜ日本語の先生がこの四字熟語を選んだのでしょうか? 無意識に選んだのでしょうか? それとも季節は日本の文化の一部なのでこの四字熟語じゃないとダメという気持ちだったのでしょうか?

 カリフォルニア州にも四つの季節がありますが、劇的に変わることはありません。日本人が持つカリフォルニアのイメージはたぶん毎日晴れ、海辺で過ごす生活だと思いますが、私の故郷(レッド・ブラフ)は盆地で山や川が立派な場所です。春と夏はとてつもなく暑いです! 真夏の時に44℃を超える日もありますが湿度が低いのでカラッとしています。そのおかげで、夏と冬のスポーツの楽園となっています。秋と冬は寒いですがダウンジャケットを着る必要はありません。テレビや本で見ていた四季ですが、カリフォルニア州出身の私には「サンダルがはける」と「サンダルがはけない」二つの季節しかありませんでした。

カリフォルニアの風景

 それに比べて日本の四季ははっきりしているし、それぞれの季節で代表するものがあります。桜、花火、紅葉、お正月など、その名前を言うだけで季節のイメージがすぐに湧きます。アメリカに住んでいた時の春のイメージはポピーの花、夏は花火、秋はバック・トゥ・スクール(学校の始まり)と冬はクリスマスでしたが、最近ちょっと変わってきました。今、春は桜、夏はお盆、秋は祭り、冬はお正月となっています。カリフォルニアではもちろん同じようなものもありますが、日本の見る目はちょっと違っていて、好きです。

 カリフォルニアでは春が来るとたくさんの花が咲きます。私の故郷では農業にとても力を入れています。世界でも有名です。ナッツや果物の木がたくさんあって、桜のような花が咲きますが木の下でお花見はしません。やっぱり桜は不思議な力を持っていると思います。日本の季節絵本の中では春や桜のテーマの絵本が多いです。私はきうちたつろうさんの『ほわほわさくら』が好きです。

 アメリカにもお盆のような行事があります。メキシコから来た文化で11月1日です。カリフォルニア州ではメキシコからの移民が多いので、この日を祝う人たちが増えています。ほかにもハロウィンでは幽霊やお化けがあの世から来ますが、家族の魂が残り、次の日にお墓で集まりパーティーをします。賑やかな日でお盆の雰囲気とはちょっと違います。ハロウィンは怖いイメージですが、日本のお盆はそうでもない感じがします。旅立った人たちにまた会えるというのはとても素敵な事だと思います。

  お祭りのイメージは夏ですが、私は9月にあるお祭りが好きです。農業の秋祭りが多いですが、私が一番好きなのは鎌倉の鶴岡八幡宮のぼんぼり祭りです。ちょっと涼しくなって来て、季節の変わり目を感じられる、アメリカの秋農業祭りの雰囲気もあります。このお祭りは1回しか参加したことがありませんが、いまでもとても強く印象に残っています。

  日本とアメリカの年末の過ごし方は全然違います。アメリカだとクリスマスがメインでニューイヤーは一晩で終わり、1月2日から仕事に戻る人がほとんどです。私は日本のゆっくりしたお正月が好きです。年末はバタバタしますが、お正月にコタツの中でゆっくりするのが大好きです。

 日本に来て、生活して、色んなところや人から影響を受けています。普段、私たちは自然から影響を受けているとは感じませんが、特に日本人や日本に住んでいる人たちは四季の影響をたくさん受けていると思います。
(ジエリー・マーティン)

 

 

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