ジェリーの日本見聞録

 

『会いたかった』

 私は本を読み終わったら必ず3つの事をします。1つ目はその本を私のお気に入りの本の仲間にするかしないかを決めます。私の家には本棚が4つしかないので本が住めるスペースが限られているのです。なのであまりピンとこなかった本は売るための箱に入れて、その箱がいっぱいになったら売りに行きます。仲間入り決定後は2つ目、その本の1番好きなところをもう一度サラッと読み返し、そこにしるしをつけます。絵本ならもう一度読みます。3つ目はその作家について調べます。作家のことを調べるとたくさんの新しい発見があります。この3つ目はできるだけ本を読む前にしないことにしています。

 自分の本棚に住んでいる本を私は仲間だと思っています。また会いたくなると、その好きなところを読みます。その本を読むとその作家の語りを聞いている気分になります。みなさんは好きな作家に実際に会って話してみたいと思った事はありませんか? 私はあります! 生きている方なら可能性はありますが、残念ながら旅立った方なら無理ですが......もし3回だけ使えるタイムマシンがあったら、会いたい作家さんは誰ですか? 本棚を見ながら考えると会ってみたい作家さんはたくさんいますが、3人だけならこの3人にします。

ホーム 第3位は住井すゑです。「え?だれ?」と思っている人もいるかもしれません。彼女はエッセイやさまざまな作品を書きましたが、住井すゑさんの名作は『橋のない川』です。大学生の時『橋のない川』の英訳を読んで、あんまりピンときませんでした。30歳になった時、日本語でもう一度読んでみました。住井すゑさんの優しくて丁寧な言葉選びに惚れ込んでしまいました。これはあまり英訳にはありませんでした。そして1番印象的なのは、重い内容なのに一度もない上からの目線です。読むたびに毎回泣いてしまいます。もし住井すゑさんと会ったらお茶を飲みながら社会問題、差別、現代教育についてたくさん聞いてみたいです。私の勝手な想像ですが、住井すゑさんはとても優しい言葉ですごく奥深い話をしてくれると思います。

 

 第2位はモーリス・センダックです。小学生の時、学校の図書室で『かいじゅうたちのいるところ』に出会いました。怪獣たちは怖かったけれど、何度もその絵本を借りました。20年後、「絵本講師・養成講座」を受講中にモーリス・センダックの絵本と再会しましたが、残念ながら2012年にモーリス・センダックは旅立たれてしまいました。モーリス・センダックの伝記を読むと彼は「子どもをバカにしてはいけない」ということと「子どもがちょっとトラウマになっても大丈夫」というスタンスを持っていたようです。この2つは私も大事だと思っています。子どもは体が小さいから大人は子どもをバカにしますが、子どもは大人よりいろいろな事を考えていると思いますし、子どもから学ぶ事はたくさんあります。絵本の中で「このページは怖いから飛ばします」という意見を持っている方は多いと思いますが、私は逆に絵本の中の「小さなトラウマ」は大事だと思います。物語はジェットコースターみたいな物なので、怖いところがないと最後の安心できるところの意味がなくなってしまうからです。

 第1位は宮沢賢治です。初めて出会った作品はアニメ版の『銀河鉄道の夜』でした。大人なのに不思議すぎてわかりませんでした。岩手県を旅行した時に宮沢賢治の記念館を偶然見つけ、初めて彼の人生について知りました。いろいろな作品を読みましたが『銀河鉄道の夜』が1番好きです。宮沢賢治についてはたくさんの研究者がいますが、その方々は直接宮沢賢治と会って話していない方が多いから、私は本当の宮沢賢治と話してみたいと強く思うのです。写真で見る限りあまり笑わないイメージがあると思いますが、シリアスな性格だけではなくてとても優しい、面白い部分もあったのではないかと私は勝手に想像しています。
(ジェリー・マーティン)

 

 

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