えほん育児日記
〜絵本フォーラム第121号(2018年11.10)より〜

「ぐるんぱ先生」として……

 

大西 真葵(絵本講師)

おおにし まき 「ぐるんぱ先生、また来てね〜!」と手を振ってくれたのは、我が子たちも通った幼稚園の子どもたち。息子が3年、娘が3年、続けて6年間お世話になった学び舎です。園では、絵本の読み聞かせに力を入れていて、毎日先生が絵本を何冊か読んでくださる時間があります。廊下には6000冊以上もの絵本がズラリと並んでいます。年間を通して毎週二回、絵本の貸出日があり、子どもたちが思い思いに一冊ずつ絵本を借りてきます。その時々の子どもたちの興味や関心・成長が、選んできた絵本からも伺え、我が家の読み聞かせ、絵本タイムをより豊かなものにしてくれていたと感じます。読んだ絵本を記録する親子読書カードは、三年間でずっしり。子どもたちのつぶやきや様子をメモできる欄があり、読み返すとさながら育児日記のようだなと思います。幼稚園生活の大切な宝物の一つです。

 その園で、4月から始まったのが「ぐるんぱタイム」です。「ぐるんぱ」と聞いて思い出すのは、『ぐるんぱのようちえん』(西内ミナミ/作、堀内誠一/絵、福音館書店)です。『ぐるんぱのようちえん』のように、楽しい時間になるようにとの願いを込めて、先生方が名付けられた月一回の読み聞かせの時間。そこへご縁があって絵本講師として呼んでいただき、園児に読み聞かせをすることになりました。

 4月、初めての「ぐるんぱタイム」では、新しく始まった読み聞かせの時間に親しんでもらえるようにと、園児たちに『ぐるんぱのようちえん』を読みました。子どもたちの食い入るような真剣な表情。ぐるんぱと一緒になって、しょんぼりしたり嬉しそうにしたり、ころころと変わっていく表情。子どもたちが見せてくれる生き生きした表情や素直なつぶやきに、「絵本って楽しい!絵本ってすごい!」と実感したひと時になりました。

 3月までは娘が在園していたので、私を見るなり「〇〇〇ちゃん(娘の名前)のお母さ〜ん!」と話しかけてくれる子どもがたくさん。ところが、5月の「ぐるんぱタイム」では、「ぐるんぱ先生」と呼んでくれる子どもが現れて感激しました。同時に、子どもたちから見れば、私は絵本の先生なのだと、背筋がピンと伸びるような緊張と責任を感じました。

  お話が決まったときから、絵本講師として呼んでいただくからには、絵本で親子をつなぐきっかけ作りを何かしたいと考えていました。お家でも絵本の話をしたり、読み聞かせをしたり、そういった絵本のある暮らしにつながるような種まきができるといいなと。

 そこで考えついたのが、『ぐるんぱタイムズ』です。その日「ぐるんぱタイム」で読んだ絵本のラインナップ、作者の紹介、月々のテーマに沿ったおすすめ絵本の紹介など。年少児でも、読んでもらった絵本がパッとひと目でわかるように、絵や写真が中心のお便りを、毎回持って帰ってもらうことにしました。園からのお便りは電子化されているのですが、子どもたちからお家の方にお便りを手渡してもらうことに意味があると思い、紙媒体にこだわって配っていただいています。子どもたちの反応やつぶやきも、お家の方にその日にお届けしたいと思っています。

  「ぐるんぱ先生」として、これから私になにができるか。園の活動に結びつく旬の絵本を選び、読むことで、園生活がより豊かになるといいなと思います。子どもたちや先生方に心待ちにしてもらえる「ぐるんぱタイム」を目指したいです。また、『ぐるんぱタイムズ』が、親子のコミュニケーションのきっかけになり、お家での読み聞かせが少しでも増えるように、お便り作りにも毎回工夫を凝らしていきたいと思います。
(おおにし・まき)

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