私の絵本体験記

「絵本フォーラム」121号(2018年11.10)より

「絵本の世界が甦るとき」

 加藤 習子 (大阪府)

加藤習子 絵本の世界が甦るとき 長女が3歳くらいから少しずつ読み聞かせをして今年で約7年目です。その間に息子も生まれ、読む順番でケンカになります。その度にいい策はないかと頭をひねりながら、ふたりに絵本を読んできました。今年息子が小学校に入学し、ふたりとも小学生になりましたが、絵本の読み聞かせは継続中。娘は自分が読んでいる本にはまっている時は「今日は絵本はいい」と言うようになり、ちょっと切ないけれど成長を感じています。

 毎晩絵本を読んでいるので子どもとの思い出の絵本はたくさんありますが、この『空のおくりもの 雲をつむぐ少年のお話』(ブロンズ新社)は特別です。 ふたりが保育園に通っていた頃、図書館で借りたのが初めての出会い。アンティーク調で丸みを帯びた優しい絵と詩的で耳に心地よい言葉に、子どもたちはこの絵本が大好きになりました。  

 ある日、保育園から家に帰る車の中、夕焼けがとてもきれいで「きれいな夕焼けだね」と私が言うと、娘が「わぁ! きれい! あのとんからとんの絵本のお空みたい!」と言って絵本の中で主人公の男の子が布を織る時に歌う歌を息子と一緒に歌いだしたのです。目の前の景色から好きな絵本を思い出し、言葉までも引き出しているのですから、これほどまでに絵本の世界が子どもたちの心の中に沁みわたっているのかと驚きました。重版未定になってしまい手元に絵本はありませんが、『空のおくりもの』を通して得た子どもとの共通体験は心の宝物です。
(かとう・なおこ)

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