えほん育児日記
〜絵本フォーラム第123号(2019年03.10)より〜

絵本がひろげてくれた世界

高橋 美保(絵本講師)

 私は、子どもの頃から本が苦手でした。字は読めても、内容がいまいち頭に入ってこないからです。本好きの友だちが読んだ本の話を楽しそうにしているのを見ても「本のなにがそんなに面白いものだろうか」と思っていました。だけど、おそらく心のどこかで羨ましかったのでしょう。わが子には、絶対本好きに育ってほしいという強い思いがあり、出産後病院を退院したその日から毎日絵本の読み聞かせをしていました。

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たかはし・みほ 絵本を読むと、愚図っていたのに落ち着く。笑う。嬉しそう。好きになったジャンルだと、絵本以外の図鑑や専門書でも、私が読むと聞いていました。子どもの興味の裾野が、本によってひろがっていくことを実感しました。それに、一人で本棚から出して読んでいる絵本が、その時の子どもの心を映し出しているということにも気づきました。

 子どものためと読み始めた絵本は、育児を助けてくれるかけがえのない存在になっていました。そして、私も自然と絵本が好きになりました。

  「絵本っていいな!」という思いが募るなか、幼稚園で絵本サークルを立ち上げたいと考えた私は、園の行事で絵本講座に参加する機会を作りました。園のママたちが「絵本で子育てする楽しさ」を知り、喜んでいる姿を見て、私も同じような活動をしたいと思うようになりました。

  「絵本講師・養成講座」の受講を決めたのは、長男が8歳、次男か4歳、三男が2歳の時でした。まだ子どもに手のかかる時期でしたが、育児の合間を縫ってレポートに取り組む時間は、日常の張り合いとなり、スクーリングへの参加もいい気分転換になっていたと思います。

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 絵本講師としての初講座は、資格取得後半年でした。「子どもカフェ」の方に資格取得の旨を伝えると、「なんでも経験、応援したい」と声をかけていただきました。講座ができるという喜びと、伝えたいという想いに溢れ、約100分絶え間なく喋り続ける、内容詰め詰めの早口講座でした。参加された方は、さぞお疲れになったと想像します。その後も、すぐ活躍したいという気持ちはありましたが、時折絵本に関する講座に参加する程度で、子育て優先の日々を過ごしました。

 そして、2回目の講座は「地域助け合いネットワーク」で、初講座から1年後でした。前回の反省を踏まえ、絵本講師仲間の前で講座練習をし「レジュメの書き方」「選書のポイント」「視線」など様々なアドバイスを受けました。その全てが、私の絵本講師としての基礎となっています。

  園のママたちの口コミで講座のお話をいただいたりして、細々と地域(神戸)で活動していましたが、昨年広島へ転居しました。知り合いが全くいない土地での生活は想像以上に大変で、日々新しい環境に慣れようと、家族全員が必死でした。そんな矢先、幼馴染から、広島に住む知人を紹介してもらいました。幼馴染の紹介といっても、波長は合うだろうかなど心配でしたが、この出会いは、私にとって、ほんとうに幸運でした。会ってみると、お互い兵庫出身の同世代だったこともあり、すぐ意気投合しました。偶然にも、彼女は、子育てに関するイベントを主宰する地域のオープンスペースに勤めていました。私の絵本講座に参加してくれたことがきっかけで「オープンスペースでも是非開催してほしい」という運びとなり、その後、月1回「絵本で子育て教室」をさせてもらえることになりました。絵本に、新しい土地で、新しい人とのご縁を結んでもらったのです。ほんとうに有難いです。

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 これからも、「絵本で子育て」する楽しさを伝える活動を、細く長く続けていきたいです。しかし、今私は、子育て真っ只中。あまり躍起になり過ぎず、先ずは「子育て第一」で、ゆっくりと進んでいきたいと思っています。
(たかはし・みほ)

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