私の絵本体験記

「絵本フォーラム」125号(2019年07.10)より

「絵本と子どもに気づかされて」

沖元 佳那   (兵庫県)

おきもと かな 私は、絵本が好きで長女を出産してから自然に毎日読み聞かせをしてきました。絵本を読み聞かせることは、風呂に入ったり歯を磨いたりすることと同じ日々の習慣でした。そのお陰か7歳になる長女は、本好きで教えなくても文字が読めるようになり、物語を作ってお話する子に育っています。3歳になる次女も赤ちゃんの頃はあまり絵本に興味を示さなかったけれど、毎日の習慣により今では絵本を読んでとせがみ、お気に入りの絵本は諳んじています。そんな娘たちを見る嬉しさのなか、私自身、絵本を読むことの効果ばかり期待するようになっていました。

 ちょうどその頃、私はアーサー・ビナード氏の講義を聞き、その時『この本をかくして』という絵本を購入し娘たちに読みました。ビナード氏が「この絵本には秘密が隠されているよ」とおっしゃっていたこともすっかり忘れていました。読み終えた後、暫く絵本を見ていた長女が言ったのです。「お母さん見て、この絵本自体が宝物の絵本になってるよ」と。カバーを外し見ると、その絵本はお話に出てくる親子の宝物の本と同じ色とデザインになっていたのです。その時やっと私はビナード氏の話を思い出し、改めて子どもの観察力と感性の豊かさに感激しました。そして、子どもの気づきに一緒に感動すること、共感させてくれるのが絵本だということを思い出しました。一つ一つの豊かな思い出が子どもたちの未来の原動力になるのだと思います。1人でも多くの子どもたちがこのような体験を増やしてほしい。それが平和につながっていくのだと心から思います。
(おきもと・かな)

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