子育ての現場から

子育ての現場から 9

子どもの自尊心を育むベビーマッサージ


南田 理恵

一般社団法人ママズケア 代表理事
神戸市看護大学大学院臨床教授

南田 理恵  「赤ちゃんの愛着形成」が大切と近年特にいわれるようになりました。信頼できる人との絆を作ることが、その後の子どもの生き方に、大きく影響を与えることがわかったからです。

  「愛着(あいちゃく)」というのは、子どもが養育者に対して「この人は安心安全」であるという、情緒的なつながりをもつことです。愛着がつくられると、子どもは、「自分は大切にされる存在なんだ!」というような、健全な自尊心をもって、様々なことにチャレンジしようとします。また、自分を大切にしてくれる人を信頼し、他人に対しても深い共感性と愛情豊かに、親やお友達や周囲の人に対しても優しい心をもった子に育ちます。愛着とは子どもから養育者への愛情(きずな)なのです。

 一方、親などの養育者から子どもへの愛情(きずな)は、Bonding(ボンディング)といいます。子どもを産んで親となれば、だれでもが、愛情深い子ども思いの親になるわけではありません。母子相互作用と言って、親と子のお互いのやりとりを繰り返す中で、少しずつ愛情深い親になるのです。

?愛着形成に役立つこと

・目と目を合わせる、抱っこする ・声を出し合う「あーあー」「うーうー」 ・子どもの声を真似して出す・一緒に笑う ・歌を歌う ・絵本を読む ・身体を使ったスキンシップ

  私は、1996年から「ベビーマッサージクラス」を主宰し、今年からは、「babi*care(babies care college)」0歳児の子育てで知っておくべき実践的な6項目について学べる講座を実施しています。講座の中には、絵本を読んで、その素晴らしさを伝えるエピソードを盛り込んでいます。ママたちは、子どものためならできるだけのことはしたいと思っています。絵本の素晴らしさを知れば、絵本を読むようになり、習慣となった子は、生後7ヶ月でも絵本を広げれば、目を輝かして絵本をみつめます。

 時々、目を合わさなかったり、自分で気持ちをコントロールできなかったりして泣き続ける子を見かけるようになりました。。母親はどうやって赤ちゃんと関わったら良いか分からず、赤ちゃんも思いが伝わらず、イライラしています。このような子には、同調の反復の繰り返しが大切で、反応性と応答性のキャッチボールが子どもの心を育てる第一歩と考え、優しくマッサージしてあげることを勧めています。背中を大きくゆっくりなでたり、脇の下から足首までゆっくりなでおろしたりを繰り返します。優しい声で歌いながらですと、さらに良いです。

ベビーマッサージ

 また、私が中国での学びで得た「推掌(すいな)」という、小児ツボを刺激するマッサージの手法も時にお伝えし、手で子どもの身体の変化に気づけるようにお伝えしています。愛情を育てるホルモンの代表的なものであるオキシトシンは、リラックス効果があり、表皮ケラチノサイトでも合成されますので、子どもだけでなく、大人も癒されるのです。

 優しい心のふれあいであるベビーマッサージに、中医学の小児ツボの知識を取り入れた方法をたくさんの方に知って頂きたいと思っています。子育てに関わる方向けの講座を開催して、全国に仲間が増えています。これからも、ママと子どもたちの笑顔のために、活動していきます。
(みなみだ・りえ)


絵本フォーラム126号(2019年09月10日)より

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