絵本のちから 過本の可能性

「絵本フォーラム」127号

2019.11.10

「絵本講師・養成講座」について

画一的ではなく多様性が魅力(報告 中村 利奈)

養成講座風景 この紙面を読んでくださっている皆さまは、「絵本講師」という言葉が度々出てくることにお気づきかと思います。その「絵本講師」とは何なのか、 簡単に説明しますと、「子育てをするにあたり、いかに絵本の読み聞かせが必要かを学ぴ、 それを語り伝え
ることができる人」 です。その「絵本講師」を育てる場として、NPO法人「絵本で子育てセンターでは、「絵本講師・養成講座を毎年開催しています。今年度は第16期生が大阪と東京で1年かけて学んでいます。 私はその「絵本講師・養成講座」を第2期に受講した絵本講師で、現在はスタッフとして養成講座に参加しています。その中で感じていることをお話ししたいと思います。

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 第ーに感じることは多様性”です。毎年100名前後の受講生が第ー編〜第6編までのカリキュラムを学んでいますが、性別、年齢、職業、目的など様々です。 幼稚園や保育園、 学校の先生がご自身のスキルアップのために受講されることもあれぱ、子育て真っ最中の方がご自身の子育てに活かすために受講されることもあります。また、出版関係の方や図書ポランテイアをされている方など、実に様々な方が日本中からいらっしゃいます。海外からDVD受講をされている方もおられます。

 その方たちが、さらに多様性”のある講師陣から学んでいきます。詩人、翻訳家、絵本作家、児童文学者、元出版社社長、医科大名誉教授などなど。絵本と子育ての周辺におられる各分野の専門家の方々から、それぞれ、その方だからこそ発信できる充実した内容を聴<ことができます。さらに各講義とは別に、第1巻〜第5巻までのテキストもあります。「絵本について」「読み聞かせについて」「絵本講座について」 など、それぞれより深く学ベる内容です。

 ただ、それらは全て”画一的”ではありません。これが私の感じている第2のことです。講師陣の講義、テキスト共にそうですが、それらを聴中村 利奈いて読んで覚えて、それで絵本講師になる、というものではないのです。 それらをきっかけに興味の幅が広がったり、さらに深く知りたくなったり。 その興味を満たすぺく調べていく、読んでいく行為が、結果として学ぴを深めていってくれます。 その方のそれまでの知識や経験、価値観などとその学ぴが掛け算のように増え拡がっていきます。そして後半では、その各自の学びで得たものを発信していく手法を学ぴます。第6編、総括編でのタイトルは「私の絵本講座」です。受講生皆さんが、それぞれ学んできたことをご自身の言葉で、「私 の絵本講座」として仕上げていきます。

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 多様性”と”画一的ではない”ということ。この二つが重なることにより、養成講座を修了した絵本講師たちの活動は、とても幅広いものです。「絵本講座」と一口に言っても、そこに講師の個性と各々の深い学ぴが加わり、それぞれの講座はどれ一つとして同じものではありません。「子育てに絵本を役立てて欲しい」という基本的な想いは皆同じで
すが、 発信の方法、言葉や題材の選び方は自分なりに考え抜いたものです。だからこそ、子育てに関わる方々の胸へ、その想いや言葉が届くのだと思います。

 このような講師を育てていく「絵本講師・養成講座」、そして修了した絵本講師たちの「絵本講座」 をお近くで機会がありましたら、ぜひ参加してみていただきたいと思います。

(なかむら.りな) 中村 利奈


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